表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1195/1603

2y

 アルマは何日も掛け、幾つもの町村を巡り、人々の話を聞いて回った。

 決して状況はよくなかったが、聖女が直々に来たとあり、多くの者達は喜んでいた。


 そうして、経由する集落をあらかた回り終わると、彼女は当初の目的地である東部戦線に向かう。

 彼女からすれば、今の光の国を根本的に直す為には、シナヴァリアやダーインの存在が必須なのだろう。


 ダーインならばともかく、シナヴァリアを国に戻す為には、直接話し合うしかない。

 事実、彼はアルマとはあまり連絡を取っていないのだ。


 高速馬車に揺られながら、幕営に到着したアルマは兵士達に挨拶をしながらも、一直線に司令部へと向かう。


「ここ?」

「はい!」

「ありがとう」


 アルマは案内をした兵に礼を言うと、幕を開けて中に入っていった。

 事前に連絡を入れていたこともあり、ダーインとシナヴァリアが部屋の中に待機している。


「姫、よく来てくださいました」

「うん。ダーインさんも元気そうでなによりだよ」


 ダーインは彼女を出迎えたが、シナヴァリアは机に向かい合ったまま、立ち上がろうとしない。

 無礼な行為のようにしか思えないが、それは彼も承知の上である。


「宰相、姫様が来てくれたのだぞ」

「……姫、すみません。こちらは仕事が残っておりますので、失礼な対応になりますが――どうぞ、ごゆっくりしていってください」


 これはあながち嘘ではなかった。

 ローチ型を葬ったことで、幾分か戦力的な安定は訪れたが、この最前線を支えるというのは容易ではないのだ。

 しかし、アルマはこれを叱責するでもなく、彼の真横に向かう。


「シナヴァリアさん、戻ってきて」

「……こちらで仕事がありますので」

「シナヴァリアさんがいないと駄目なんだよ! 善大王さんが頼んだシナヴァリアさんがいなきゃ……」


 それを言われ、シナヴァリアは表情を僅かに変えた。


「私は善大王様の期待に応えられなかった。その私に、何ができると」

「そんなことないよ! あの時だって、シナヴァリアさん達が来てくれなかったら――」

「あの勝利は、姫のものですよ。我々ができたのは、ただその時間を稼ぐくらいのことでした」

「……頑固もここまでくると困った者ですね。首都ではバール暗殺の主犯は知られていない。戻れば済む話ではありませんか」


 呆れたように、ダーインはそう言った。


「それで、誰がここを取り仕切る」

「私と、タグラム殿で十分でしょう」

「……であれば、ダーインが戻るべきだ。幸い、あなたはすねに傷を持ってはない。タグラム氏や私よりも適任では?」

「すねに傷のある男二人に、この最重要地点を任せろ……と? それに、ライトロード王が統治している以上、私の出番はありませんよ」


 彼からすれば、これは望ましい状況だった。

 ダーインはシナヴァリアのように、政治に精通した者ではあるが、それ以上に正統王家を重視する男なのだ。

 自らが王とする相手が権力を掌握する状況を、悪いと思いはしないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ