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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1160/1603

7j

 要地襲撃部隊は三名毎に分かれ、ガムラオルスに指示された場所をほぼ同時に叩いた。

 とはいえ、ほとんどの場所は勝負を決めきるには不足とし、火属性の術や松明を投げ込み、燃やすだけに留めている。


 確かに、風の一族は人間を越えた能力を有していた。

 しかし、彼らが強くとも、建造物が強固になるわけではない。

 むしろ、山での比較的原始に近い生活をしている以上、地上のそれには及ばないのだ。


 瞬く間に火は広がり、布は燃えさかり、骨とも言える木製部分を燃焼させる。

 近くにいた者、内部にいた者、遅れて助けに来た者達が風属性を使って吹き消そうとした。

 だが、多くの火は小規模な風で吹き消せるレベルを越えており、むしろ火災の度合いを高める効果しか持たない。


 彼らとて、火の性質くらいは理解している。

 風属性の使い手ということもあり、火起こしにおいては術なども用いているのだ。

 ただ、今は焦りも強く、早急に消す手段としてそれしか思いつかなかったと言うのもある。 


 そして、戦士達は肝心の侵入者を捉えることもできず、消火作業に追われることになった。

 そうこうしている間に、ばらばらに突入した三名のチームはそれぞれに族長テントへと向かう。


 とはいえ、最初に突入したチームが既に制圧を終えており、後続のチームはこれを盤石(ばんじゃく)のものにするという具合だった。


「こいつが族長か?」

「ああ」


 ウィンダートは黙ったまま、座していた。部屋には女性や子供も居た。

 隊員達はこの威厳に満ちた男が族長だと判断しているが、大きく間違ってはいない。


 シナヴァリアはティアが族長である、ということを伏せていた。

 それは自分の対処する相手であるから、ということもあるだろう。

 しかし、本音としては彼女を族長などとは認めたくない、という男の(サガ)によるものだ。


 しばらくすると、入り口の幕が上がり、一人の隊員が顔を覗かせる。


「全員集結したようだ」

「……よし、なら里の全員に降伏勧告だ。《魔技》を使える奴は――」

「合格ね」


 突如として聞こえてきた子供の声に気付き、全員が辺りを見渡した。


「誰だ声出した奴は!」

「黙ってんじゃねえぞ!」


 見渡すが、ほとんどの子供は――女性もだが――彼らの粗野(そや)な態度に怯えている。


「静かにしてくれない? 逃げはしないし、隠れもしないわ」


 そこでようやく、声の主を見つけた。

 族長の隣に堂々と座りこむ、一人の少女。長い髪は周囲の緑を拒絶するように、藍とも紫とも言える色をしている。


「なんだてめぇは!」

「ぶっ殺されてえのか!?」

「さすがは火の国の人間。粗野で乱暴ね」


 隊員の一人が手をあげようとするが、止める者は誰も居ない。

 なにも、彼らは平和的手段でこの里を攻略しに来たわけではないのだ。


 脅しの材料としては、族長一人で十分であり、子供の一人や二人を殺したところで影響はないと見ていた。


 しかし、屈み込もうとした瞬間、男はそのまま崩れ落ちた。


「おいおい、なんだよ」

「ずっこけてんじゃねえよ」


 隊員達は笑うが、しばらくしても起き上がらないことを見て、顔が(こわ)ばる。


「な、なんだ! 族長、てめぇの仕業か!」

「抵抗すんなら、ここの女やガキを全員ぶっ殺してもいいんだぞ」

「三つ数えるまでに、それができるなら上等な部隊ね」

「は? 何を言って――」


 男達は次々と倒れていき、テント内は一気に静まりかえった。


「一人目の時点で幻術に警戒しないなんて、論外ね」


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