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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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3j

 ――風の大山脈にて……。


「……」

「ティア、どうしたの?」


 ティアは黙ったまま、遙か先の(ふもと)を見つめていた。


「来たみたい」

「誰が?」

「……ガムラン」


 それを聞き、エルズは眉を顰めた。


「なんであの人が? まさか、戻ってきた――やったじゃん、ティア」

「……」


 エルズと違い、ティアには分かっていた。というより、見えていたのだ。

 おおよそ人間では目視不可能なはずの距離だが、彼女は風の一族――その上、この土地は《風の星》なのだ。

 明らかに異質の魔力が無数あり、それを統べているのがガムラオルスであるという時点で、ただ事ではない。



「ティア?」

「たぶん、ガムランはここを攻めに来たんだと思う」

「攻めに……? そんなことあるはずないじゃない!」

「でもっ……! ガムランの周りに、私の知らない火属性の魔力がいっぱいあるんだもん!」


 それを聞いた瞬間、彼女は思い出した。

 未来のガムラオルスは南に向かって飛び去った。つまり、彼が火の国に行ったのは確定である。

 その国の人間を引き連れて戻るなど、普通ではない。ただの帰郷であれば、一人で来ればいいのだ。


「そうは言っても……エルズはガムラオルスに――」


 頼まれてここに来た、と言う前に、エルズはもう一つのことを思い出した。


「(もしかして、このことを知っていたから、ガムラオルスはエルズをここに呼んだの……?)」


 魔物の襲撃は幾度かあったが、その全てがエルズを絶対的に必要とするものだったか、と言われると微妙なところだった。

 しかし、今回の場合は例外だ。相手はこの山を知りつくした人間。


「エルズ?」

「……手を打たないとね。ティア、里に戻るよ」

「ううん、私は――別の場所に行くから」

「なっ、なんで!」

「エルズ、里のみんなをお願い」


 ティアの瞳に宿る決意を見たからか、エルズは何も言い返せず「無茶はしないで」と平凡な言葉を返すことしかできなかった。


 そうして里に向かうまでの道で、彼女は思考を巡らせる。


「ティアは、ガムラオルスと戦うつもりだ。大好きな人と……本気で」


 エルズが見た瞳に込められていたのは、明確な戦意だった。

 話し合う気など初めからなく、この山を脅かす障害を排除する、という巫女としてのものである。


 しかし、それが分かったところで彼女は何もできなかった。

 親友がそれを決意した時点で、自分が口を挟む余地はないと分かってしまったのだ。


 そうなると、彼女にできるのはただ一つ。

 鍛え上げた戦士達を使って、敵を迎撃する。そして、この山を守る。


 ガムラオルスが創設した部隊を用いて、彼の部隊を打ち負かすのだ。これほどの皮肉はない。


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