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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1149/1603

26y

 戦いは終結した。

 周囲を覆っていたオーロラは次第に薄れていき、皆の体に(みなぎ)っていた力もすっと抜けていく。


「おわった……のか?」

「勝ったんだ! ぼくたちが勝ったんだ!」


 この戦いに携わった全ての者達が――軍人も、民もなく、全員が手を取り合い、感動を分かち合った。


「姫様、やりましたね!」インティは笑みを見せた。

「……うん、うん! やったね!」


 人の心が一体になる感覚が、彼女の中を満たしていった。

 もう、《星の秘術》の効果は切れている。それにもかかわらず、彼女が――いや、誰もがそれを感じているのだ。


「シナヴァリアさんも、ダーインさんも、お疲れさま!」


 戦いが終結し、彼らもアルマの近くに戻ってきた。


「いえ、あれはアルマ姫が皆を信じたからこそ起きた、奇跡ですよ」

「それについては、認めざるを得ないな。姫がいなければ、間違いなく我々は終わっていた」


 彼女はこの場に集まった全員が、誰一人欠けることなく勝利できたことを、心の底から喜んでいた。

 しかし、すぐにもう一つの気掛かりが見つかり、辺りを見渡す。


 すると、周囲の雰囲気とは交わることなく、思い詰めたような表情をしたバールが目に入った。


「あっ、バールさ――」

「皆、これこそが祈りの力だ。神は常に我々を見ている。そして、調和を重んじたからこそ、この場で我々を救ってくださった」


 その声を聞いた瞬間、全員はこの戦いに加わっていた一人の老人が、法王であることを思い出した。


「これは姫の力だ。神など関係は――」

「法王バール、お前があの魔物の手引きをしたことは、調べが付いている」


 正統派の人間としての意見を述べようとしたダーインを遮り、シナヴァリアは法王を糾弾した。


「魔物? なんのことだ」

「とぼけるつもりか? 各地の町村を巡り、人間を魔物に変異させていた、ということは分かっている」

「――で、あるとして、そのようなことをする男が魔物と戦うべく、この場に来るものか?」


 民の多くが、法王の意見に賛同した。

 彼の言い分が正しいこともそうだが、シナヴァリアは本来、ここに居るべき人間ではないのだ。


「元宰相、職を辞したはずの君が軍の指揮を取り、この場に来たことのほうが異常だと思うのだが」

「……」

「上手く責任と刑から逃れ、軍内部では元の通りに権威を握っている。あれほどのことをしながら民を騙し、未だに権力に縋る君の言葉に、どれほどの正しさがあるというのだ」


 この発言、実のところ相当に重いものだった。

 シナヴァリアを更迭に追いやったのは、神皇派のタグラム。この件には教会は一切介入しているのだ。

 魔物の件で追及を行ったところで、この叱責を完全回避することはできない。


「民を味方に付け、逃げ(おお)せるとでも?」

「何が正しいのかを判断するのは神だ。人が人を裁くなど、傲慢にもほどがある」

「教会がそれを口にするのか」

「……魔物は討たれた。くだらない問答をする時間なら、いくらでもあろう――今は、神の与えてくださった恵みを感謝し、祈りを捧げるとしよう」


 証拠はいくらでもあった。

 しかし、この場で証拠を見せたところで、民を納得させられるとは思えなかった。

 結局、シナヴァリアとダーインはそれ以上追及することはなく、ほどなく皆は首都に戻っていった。


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