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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1144/1603

21y

 凄まじい光が周囲一帯に拡散し――ゆっくりと元の状態に戻っていく。


「何をするかと思ったら、ただのハッタリかい。つまらないことをするものだねぇ」


 明らかな呆れを見せる魔物だが、それはライトロード側にしても同じことだった。


「(攻撃ではないのか……?)」


 シナヴァリアはもちろん、前線で小型ローチと戦う者達でさえ、これには期待外れという反応を見せた。

 しかし、すぐに気付く。魔物を除外した、純粋な人間のみが知り得る情報として。


『みんな、あたしの声が聞こえる?』


 誰もが顔を見合わせ、そして同じ声を聞いていることを確かめた。


『今、みんなの意識を《光の門》で繋いでいるの。首都の近くにいる人達、みんなにわたしの言葉を聞いてほしいから』


 それを聞くと、ダーインは何かに気付いたらしく「あの虫を薙ぎ払え! 今の我々は巫女様の庇護下にある」と高らかに宣言した。

 理解できないままに、しかしやることは変わらないと戦い出す者達を見て、彼は改めてアルマを見つめる。


『《光の門》を通じて、みんなに正の力を……すごいパワーを送ってるから、みんなで戦えるの!』

「みんなで……?」


 シナヴァリアは意味を理解できなかったが、戦況を見た瞬間、彼女の発動した術の効果を把握した。


 驚くことに、先ほどまで押されていたとは思えないほどに、騎士達はローチを圧倒していたのだ。


「すごい! 力が溢れてくる……負ける気がしない!」

「これが《光の門》の――巫女様の力……っ!」


 強化系統の術とは比較にならない強化が、そこに成立していた。

 戦う者達の体は虹の七色(プリズム)に発光し、その機動力は風の一族のそれを思わせる。

 さらに、それだけには止まらず、斬撃に至るまで正エネルギーによる強化を帯びていた。

 剣が魔物の外皮に触れた瞬間、《皇の力》が対消滅を起こすように、接触面を分解していく。


 恐るべきは、《皇の力》とは違い、正の力が無尽蔵に供給されるということ。

 対消滅によって力は消えるが、その直後には同量が補給され、鋸の歯で木を削るような斬撃が成立している。


「これが……姫様の《秘術》!?」

「アルマ姫らしい術だ」


 ダーインはアルマが編み出した《秘術》、そこに込められし願いを読み取った。


「姫は人の心が乱れ、世が乱れ、変わってしまった光の国を元に……いや、かつてあった理想を今も尚、目指し続けたからこそ、こうした術を成立させられたのだろう」

「平和だった頃の、光の国か。託されるには、重すぎる理想だ」


 大貴族は口許を緩めた。


「まさか。姫が我々、軍人にだけそれを託しているはずがなかろう。あのお方はこの国の民、全てにその願いを伝えたのだ」


 彼の口調は明らかに変わっていた。

 今、ここに居るのは指揮官のダーインではなく、正統派の筆頭であるダーインなのだ。


『お願い。首都の中に居るみんなも、あたしに……あたし達に力を貸して! みんなで、魔物を倒すんだよ!』


 彼女の言葉は、城壁の中にいる民にも届いている。

 そして、この言葉は《光の門》を通じて発せられている為、頭に直接届く。

 辛い現実から目を背けようとも、耳を覆ったとしても、それは真に理解できる心の波音として響き渡る。


『でも、俺達じゃ』

『軍の人と違って、私達じゃなんの役にも』

『ぼくも戦いたいけど、子供のぼくじゃ』


 当然のように、否定の声が聞こえてくる。その声は意識の中で反響し、接続中の全員に共有された。

 心の声さえも隠し通せぬ状況ながらも、多くがそう思っていた。だからこそ、隠せない本音を恥じる者はいなかった。


『あたしだって、何もできなかったよ。みんなを守ろうって、一人で頑張って……でも、あたしにできたことなんて、ちょっぴりだったよ――でも、教えてもらったの。一人じゃなくて、みんなで一緒ならいーっぱいのことができるって!』



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