16y
アルマが戦場に立ったことで、士気は著しく高まった。
彼女を危険から遠ざける為に、戦士達はそれまで以上に活躍し、またアルマの支援によって強化の度合いも高まっていた。
ほどなくして、敵戦力のほとんどが打ち倒され、敵の撤退が確認される。
勝利した、と誰もが考えて安堵する一方、相手が退くまでは片隅に注意力を残していた。
アルマは全員の連携、実力に驚く一方、強い喜びを覚えていた。
「みんな、強いね!」
「はい! 皆、ライトロードの精鋭ですから」
インティは自分もその一員であることを誇らしく思い、姫の問いに謙遜一つなく応えた。
ただ、それは傲りではない。あの絶望的状況をひっくり返した、というのはそれだけ凄まじいことなのだ。
魔物の姿が見えなくなるまで、しばらく掛かったが、無事に全個体が逃げ終えるのを確認して騎士達は歓声をあげた。
「アルマ姫、大丈夫でしたか!」
戦闘終了によって持ち場を離れることを許されたダーインが、いの一番にアルマのもとへ現れた。
「わあぁ! ダーインさん久しぶりぃ」
「はい……長らく国を空けたこと、心より――」
「ううん、いいの。ダーインさん達が帰ってきてくれたなら、百人力だから!」
彼女の眩しい笑顔を向けられながらも、ダーインはなにか引っかかりがある、と言いたげな表情をした。
「どうしたの?」
「姫、教会の者達が魔物と連なっていることは」
「……うん」
「証拠は」
「ううん。何もないの」
「なら、安心してください。私の方で、教会の悪事を突き止めました」
予期せぬ言葉に、アルマは目を丸くした。
「えっ、どうやって!?」
「自由に動ける者に頼んでいたのですよ。その結果、連れ去られた者達は――」
そこで言葉を切り、彼は視線を逸らした。
「姫、我々が決起する時、皆を導いていただけますか?」
「えっ……う、うん! 任せて」
ダーインはここでようやく笑みをみせ、彼女の隣に控えていたインティに目を向ける。
「この件については口外しないように」
「は、はい」
釘を打った上で、続きを述べ始めた。
「我々は首都近くに陣を張り、しばらくは待機する予定です。教会の者達を追い落とすのは、翌日以降にしましょう」
「お父さんは、大丈夫かな」
「……心配なさらないでください。お父上に飛び火しないよう、正統派が手を尽くしますので」
結果的にそうなったとはいえ、現在の統治者は正統王家の当主なのだ。
現政権の問題を追求しようと思えば、当然のように彼にも波及することになる。
とはいえ、それを防ぐ方法は幾らでもあり、大きな問題ではなかった。