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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1137/1603

14y

 戦線が安定し出した頃、シナヴァリアが単身でアルマのもとに現れた。


「シナヴァリアさん!」

「救援の遅れ、謝罪いたします」

「ううん、大丈夫! ……でも、向こうは大丈夫?」

「適材適所、というところでしょうか。あちらには適任の男を置いています」


 アルマは首を傾げるが、彼は明言することを避けた。


「ダーインさんも来てるの?」

「はい。彼は現在、部隊の指揮を執っています――私がここに来た理由は、分かりますね」

「一緒に戦うんだよね!」

「いえ、姫様には避難してもらいます」


 聖女は目を大きく見開き「なんで!?」と問い質した。


「お立場をお考えください。あなたの代わりはいないのですよ」

「……」

「シナヴァリア様、それは宰相としての命令ですか。あなた個人の意向ですか?」


 彼女の隣に控えていたインティが割り込んできた。

 シナヴァリアは露骨に不快感を滲ませるが「お前が知る必要はない」と穏やかに答えた。


「私は姫様から直々に、護衛を任ぜられました。聞く権利はあります」


 仏頂面の宰相は姫の顔を見て確認を取るが、彼女は彼の意図に反するように頷いた。

 呆れたような仕草を見せた後、彼は低い声で「国としての意志だ」と断言した。


「ならば、従う理由はありませんね。あなたは今、宰相ではない――姫様の意向を優先すべきだ」

「学生上がりがよく言う」

「気に入りませんか?」


 二人がどことなく険悪なムードを醸し出したからか、アルマは仲裁に入ろうとした。


「ふ、二人とも……やめようよ」

「……いや、構わない。姫の護衛、ご苦労だった」


 若い術者は笑みを浮かべ「だと思いましたよ。さすがは宰相、私が思った通りの人です」と言った。

 アルマはよく分からなかったものの、二人が喧嘩をしなかったことに一安心した。


「しかし、姫様には一つ約束してもらいたい。もし、身に危険が迫ったとあれば、何よりもご自身を優先するように――できますか?」

「う、うん……なるべく頑張るよ」

「……非常に不安ですが、いいでしょう」


 シナヴァリアから許可を勝ち取れたことを喜ばしく思う一方、口添えをしたインティに感謝を示すように、頭を下げた。

 彼は黙ったまま小さくお辞儀をし、礼に応えた。


「――とはいえ、このままであれば勝利するのも時間の問題でしょう。姫様には後方からの支援に徹していただきます」

「えっ、それでいいの?」

「はい。あの者達は連日魔物と戦う、熟練の兵です。完璧な支援さえ与えれば、藍眼の魔物にさえ苦戦することはありません」


 藍眼を容易に撃破する、というのは他国では考えられない強さだった。

 しかし、それもそのはずだ。彼らは日夜進化を続ける魔物と戦い続け、その変化にも対応して生き残ってきた者達なのだ。

 一人一人が幾度も死線を越え、極限まで研ぎ澄まされた刃の如く鋭さを有している。


「みんな、頑張ってくれてるんだよね。うん、分かったよ! あたしは全力で応援するよ!」


 シナヴァリアは会釈し、「では移動しましょう」と言った。


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