表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1135/1603

12y

 その後も榴弾の投擲は続き、城壁には大穴が開いた。

 そこからは羽虫が侵入していき、空中は彼らの隊列によって(とばり)が降りたように見えた。


 アルマは急ぐが、幾ら急いでも彼女の走る速度は子供のそれでしかない。

 ようやく正門に到着した頃には、既に彼女一人の手には余る状況となっていた。


「どうして……どうしてこんなことに」


 後悔する時間さえ惜しむべきだが、彼女はもはやそんな当たり前のことさえ分からないほど、気力を削がれていた。


 そんな彼女の頭上を飛び越え、魔物の放った榴弾が一つの施設に着弾した。

 そこは、彼女が確認した限り、人が集まっていた地点だった。


 叫び声は爆音にかき消され、無数の人の命が爆炎の中に消えた。


 背後には黒煙が立ち上る町が、正面には迫り来る大型の魔物が、空には羽虫が在った。

 ライトロードは、完全に包囲され、破壊を待つだけとなった。


「やっぱり、あたし……なにもできなかった。善大王さん、ふーちゃん……ごめん」


 崩れ落ちたアルマの顔は、絶望に染まっていく。


「姫様!」

「……! インティ、さん?」

「姫様は空の魔物を! これ以上、魔物の好きにはさせません」

「でも、もう駄目だよ」

「……空を見てください」


 見上げた瞬間、アルマは目を大きくした。

 無数の光芒が走り、空を飛び回る羽虫を打ち落としていく。

 爆弾を抱えた羽虫を打ち抜いた時には、爆発が連鎖していき、煙が雲のように広がった。


「えっ、これって」

「ほんの少しの抵抗でしかありませんが、首都で戦える者が皆、戦っているんですよ」

「でも、こんなにいるなんて……」

「学生にも手を借りています。彼らでは羽虫を仕留めることはできませんが、時間を稼ぐことくらいはできます」


 彼女がただ一人で戦おうとする中、多くの者が立ち上がり、この国を守ろうとしていた。


「姫様!」

「……分かってるよ。あたしだって、まだ頑張れるから」


 深い絶望は身を滴り落ち、彼女は再び立ち上がる機会を得た。

 凄まじい勢いで刻まれていく《魔導式》を見て、インティは口許を緩めると、同じように展開を開始した。


 黄色の光が空を踊り、空を覆う黒い幕は穴の開いた傘のようになっていく。

 とはいえ、こうして倒しているのは羽虫。本命とも言える大型の魔物は依然として接近を続けている。


「外の魔物を倒さなくてもいいの?」

「今はとりあえず、羽虫の撃破を。奴らは爆薬を持ち、空から首都を攻撃してきます。外の魔物であれば、まだ時間があります――それに」

「……それに?」


 インティは被りを振ると「《光ノ百十二番・流星群(スターダストシャワー)》」と詠唱を行った。


 無数の光弾が羽虫達よりも遙か高い地点から降り注ぎ、翅などを引き裂いていく。


「今できることをやるだけですよ。そうすれば、きっと奇跡は起きます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ