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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1127/1603

4y

 ――光の国、ライトロードにて……。


 光の国は大きく変わっていた。

 それまでの重税に次ぐ重税による民の負担はなくなり、その人ができることをできる限るする、という適切な対応が取られるようになった。


 それが成立したのは、教会が本件に介入した為だった。

 多くの貴族、軍人は教会の言い分を信じている。当たり前だ、彼らは皆等しく敬虔(けいけん)な信徒なのだから。

 だが、それ故に混乱は静まり、教会を頂点とした治世が成り立った。


 誰もがそれに疑問を持たなかった。むしろ、教会はこうした有事にこそ民を先導するもの、と自らで判断するほどだった。


 ただ、アルマが望んだような展開にはならなかった。つまり、シナヴァリアもダーインも国には戻らなかったのだ。

 一応、彼らに召還命令は下されていた。これは姫の要望でもあったのだが、当人等の希望によってこれは拒否されている。


 だからこそ、アルマも納得した。戦場には彼らが必要なのだと、自分で補完した。


 そして、現状この国を治めているのは正統王家――アルマの父だ。

 無論、今までほとんど(まつりごと)にかかわらなかった彼が全てを取り仕切ることはなく、教会が推薦した貴族が補佐に付けられている。


 タグラム失脚後、明らかにこの国はよくなったはずだった。

 だが……。


「姫様、考え事ですか?」

「……うん」


 いつかの踊り場で、アルマは城下町を眺めていた。

 そんな彼女の傍にいたのは、国防部隊の――正しくは、()国防部隊のインティである。


「……何を、お悩みですか」

「失踪する人が、増えているみたいなの」

「……そうですか」


 教会が政権を握ったことで、国は大きく変わった。

 その一つが、タグラム主導のもとに創設された国防部隊の解体。それによって、インティはお役御免になるはずだった。

 だが、アルマが咄嗟に彼を自身の護衛に組み込んだ為、戦場に送り返されることは避けられた。

 何故、彼女がそこまでしたか、それはもう一つの変化を説明しなければならないだろう。


 国防部隊の解体に準じて、首都勤めだった軍人の多くが戦場へと送られたのだ。

 それは教会が掲げた、適材適所の政策によるところが大きかった。

 多くの富を持つ民は金を、戦う力を持つ者は戦場へと、そして――戦う力もなく、財を蓄えていない民は祈りを捧げた。


 それまで重税に喘いでいた民からすれば、これは救いの糸にも等しかった。

 税の徴収は止まり、ただ祈りを捧げるだけでいい。それだけで国民としての義務を果たせるのだ。


 ただ、それによって大きく生産力が低下した。祈祷の時間は大幅に取られ、労働よりも重視されるようになったのだ。

 それを埋め合わせるのは当然、軍人や富豪、貴族といった者達である。


 この時点で分かるかも知れないが、今の首都は魔物に対しての抵抗力が大きく削がれていた。


 ただ、それは失踪の件とはあまり関わりがなかった。


「魔物の出現はあれ以降、ぱったりと止まりました。失踪についても、姫様が気にすることではないかと」

「……うん」


 彼の言うとおり、タグラムの失脚以降、首都内部――それどころか、各地の町村にも魔物は現れなくなった。

 今、魔物が暴れているのは戦場であり、そちらは以前の比ではないほど勢いが増しているということだ。


「たぶん、教会の人達がどこかに連れて行っているんだと思うの」

「なら、問題ないのでは? 確かに、彼らのやり方は極端ですが、人間の側であれば」

「……うん」


 アルマは具体的に言い出すことはできなかった。

 教会が人を連れ去っている、ということは確証を掴んでいた。

 しかし、その人々がどうなっているか、については彼女も知るところではない。


 ただ一つ確かなのは、連れて行かれた信者が魔物と化していたということ。


 アルマは教会が魔物と通じているのではないか、と思っていた。思ってはいたが、それを口にすることを避けていた。

 彼女のように地位のある人間がそれを言えば、ただの戯れ言では済まない。

 そんな危険な存在が国を統治しているともなれば、民の混乱は想像を絶するものになるだろう。


 正体を暴けば、それもやむなしといったところだが、彼女はそれをできるような立場ではなかった。

 少し前――近衛騎士の多くが戦地に送られる前であれば、人員を割くことで調査を行うこともできた。

 ただし、それは過ぎたことである。彼女のような子供には酷な話だが、決断するタイミングを逃したのだ。


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