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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1123/1603

31χ

 ――雷の国、イルミネート。ダーム商会本部にて。


「クラフォード、ご苦労だった」

「はい」


 黒は背もたれ両肘を掛け、足を組み替えながら「これで雷の国は、軍事国家に変わる機会を得た」と言った。


「善大王を生かしていたことが、功を奏しました」


 その言葉を聞いた瞬間、ボス代理は富豪を睨み付けた。


「それはお前が判断することじゃねェよ。それとも、これで自分の失態が帳消しになるとでも?」

「結果として、我々に利することになった。それは紛れもない事実かと」

「チッ、(ツラ)の皮が厚い男だ」

「それが、ラグーン人としてのし上がる、第一条件ですので」


 彼の譲らない姿勢に根負けしたと言わんばかりに、黒は「ハッ」と軽く笑った。


「当初の計画では、私が今回に近い提案をするはずでした。ですが、それを王自ら助力を願った善大王が取り仕切った、となれば怪しむ者はいないでしょう」

「ンなこと言われなくても分かってンだよ」


 今回行われた国防策は実のところ、組織が意図する通りのものであった。

 組織が将来的に王家の機能を凍結させ、自主的な統治を行わせようとしている、ということはかつても語った通りだ。

 火の国の盗賊ギルド――こちらは黒の思惑で潰されたが――や水の国の冒険者ギルド、光の国の教会などがそれに該当する。


 雷の国については富豪がこれを担当するという手筈だが、彼らは資本こそあれど、戦力については大きく水をあけていた。

 その対策として、組織は雷の国の国民性を大きく変えようとした。


「戦いが終わった後も、国民の戦争に対する関心は維持されています。工場についても、沈黙したアルバハラのもの以外は稼働中――そのアルバハラにしても、復旧が進められています」

「こちらの想定通りだな。以前の雷の国なら、戦いが終われば必然性のなさから、軍備増強は止めていただろうな」

「コミュニケーションよりも資本に重きを置いていたラグーン人が、大きく変わったということですね」

「ああ、そうだ。奴らは連携することによる一体感を覚えた。この不安が蔓延する時代において、その快楽は至極のものとなる――向こう(・・・)での調査通りだ」


 戦略においては、情報(ノウハウ)がものを言う。

 ことミスティルフォードの情報において、組織はどんな集団、個人よりも上をいっている。

 彼らに次いでいたのが、とある個人だった(・・・)、というのが皮肉な話だが。


「しかし、闇の国を迎撃してもよかったのですか?」

「……あれがどうなろうとも、組織には何の関係もない。こちらはもとより、軍事的勝利を目的としていない」


 国家機能を停止させ、民に主権を与えることこそが、組織としてのゴールだった。

 故に、何を壊す必要もなく、誰を殺す必要もない。それをするのは他でもなく、この世界に生きる人々なのだ。

 組織がするのは、彼らが決起するように仕向けること。戦争を引き金に、国家の力を削ぐことだけだった。

 故に、闇の国が敗北しようとも影響はない。主宰こそ同じではあるが、蜥蜴の尻尾のように切り離せる存在でしかないのだ。


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