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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1121/1603

29

 定期船と比べるとずいぶん小さく、八名ほどが入れるという広さである。

 ただ、内装はずいぶんとしっかりしており、ソファーやテーブルまで配置されていた。


「こんな宝具もあるんだな」

「すごいでしょう! いやぁ、こんな船はそうそうありませんよ!」

「別にあんたのもんじゃないだろうに……ってか、こんな旅にまで付き合うなんて、本当に腐れ縁だねぇ」


 チャックは既に操舵席――妙な画面が幾つか付いている――におり、どっしりと椅子に座りこんでいた。


「旦那に頼まれたからにはやらないわけにゃいきませんよって。それに、ぼくじゃなきゃこんなじゃじゃ馬は操れないってことですよ。船出したら代わりにやってみます? いやいや、危ないからやめときましょ」


 相も変わらず、舌が止まると死んでしまうのではないか、という速度で話していた。

 善大王は特に気にするでもなく、フィアの隣に座ると「早めに出てくれ」と言った。


「ヘイヨ! じゃあ出発しますんで――おっと、思ったより速いんで気をつけてくださいよって」


 ゆっくりと旋回し、出発体勢が整った。

 船は次第に加速しながら大陸を離れていく。

 そんな時、陸で見送るラグーン王が深々と頭を下げている姿が見えた。


 善大王はしばらくそれを見た後、大陸方面から目を離した。


「んなことしなくても分かってるっての」

「えっ、なに?」フィアが言った。

「なんでもない……それはそうと、この集まりはなんだ?」


 出発して、ようやくその話題が出た。

 しかし、アカリは目を閉じ、腕を組んで黙ったまま。

彼女の隣に座るヒルトも同様であるが、彼女は仕事人ほど露骨ではなく、目のやり場に困っていた。


「……うーむ」

「まぁ、あれですわ。沈みかけの泥船から逃げるってのがこのツアーの目的だったってことで。でもまぁ、無事に闇の国を追い返しちゃったもんで、なかなかどうして不自然な船出になっちゃった、ってことですわ」

「ほぉ、なるほど。つまり、仕事人はこの船を使ってさっさと逃げようとしたワケか」

「……別に雷の国の人間ってワケでもないしねぇ」

「いや、別に文句を言おうってわけじゃない。ただの嫌みだ」

「ハッ」


 どこか陰険な雰囲気が漂い、フィアやヒルトといった年少組は気まずそうにした。


「にしても、そこの剣と銃……あんたのかい?」アカリはチャックに言う。

「えーはいはい。もちろん、ぼくのですよ。ヒルトちゃんに何かがあった時はぼくが守りますんで、そこのところよろしくおねがいしゃーっす」

「もっとマシな護衛だと思ったんだがねぇ。まぁ、これを操縦できるのがあんただけっていうなら、仕方ないけど」


 そこで会話が途切れた。

 重苦しい空気が船内を圧迫するかに思われたが、虚空を見つめていたフィアが、そしてヒルトがそれに気付いた。


「なんか、すごい速いね」

「……ん?」


 外を見た瞬間、その異常さに気付いた。


「おいおい、これ速いなんてもんじゃないぞ。港があんなに小さくって……」

「あーはい、定期船の九倍近くは速度出てると思いますよー」

「これが宝具か……いや、本当に驚きだ」

「最高速にすればもう少し速くになりますよ」

「まだ速くなるのか!?」


 思ったより早く光の国につきそうだと思い、善大王の機嫌はとても良くなった。

 さすがに遅れを取り戻すほどではないものの、戦いの甲斐はあったと判断できるものだった。


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