9
「(やっぱり、先輩だけがすごいんだ)」
初の顔合わせの時、アカリは部隊のメンバーの品定めをしていた。
魔力探知能力が生まれつき高かったこともあり、放たれるそれによって実力を把握するに至る。
メンバーはアカリとシナヴァリアを含めて五人。三人についてはアカリよりも少し上、という程度でシナヴァリアとはかなりの差を開かれていた。
「明日は貴族領に踏み込む。なるべく戦闘を避け、内情を探る……質問は」
隊長と思わしき茶髪の男はそう告げる。
誰も質問せず、そのまま初の顔合わせはあっさり終わった。各自散っていく最中、アカリはシナヴァリアの後ろをついていく。
そうして城下町に入った時点で、ようやくシナヴァリアは答える。
「なんだ」
「先輩が隊長じゃないんですか?」
「私は所属して一年しか経っていない。士官候補ではあるが、単純に時間の重みが足りない」
「先輩の方が強いんですよね」
アカリはガツガツ聞いていった。
「組織において実力は二の次だ。特に、暗部であればなおさら。アカリもその件で慢心はするな」
「慢心なんてしませんよ」
「明日の目的はなんだ」
「内情を調べる……ということですよね。資料によると黒と思われる、と」
「そうだ。だからこそ、今回は戦闘がないと思え」
シナヴァリアはアカリが調子に乗るのではないか、と危惧していた。
事実、彼女の年齢で術者に到達し、その上二百番台まで使えるとなると誇ること自体は間違いではない。ただ、その驕りが許されるのは表の世界だけ。
翌日の任務は恙なく終わり、アカリも出すぎた真似をせず、隊長の命令に従った。
二度目となる確認だが、その任務の最中に隊長を含め、メンバーがたいしたことがないと感じてしまった。
シナヴァリアは一年しか所属していない、と言った。それはつまり、アカリと時期はさほど変わらないということになる。
それにもかかわらず、技術習得率は他のメンバーを上回り、その上でアカリに同等の能力を教育するだけの技術を持っていた。
この時点で彼女が抱いたのは、強い驕りとシナヴァリアへの尊敬、そして隊長への不満。
しかし、そこはシナヴァリアに教育されたというべきか、隊長の命令には従っていた。とはいっても、基本的に戦わないので直の命令というよりかは全体命令に近かった。
問題が浮上し始めたのはそれから少し先、半年が過ぎようとした頃だ。
「今回は偵察任務だ。とある貴族が薬物を市場にまわしているという報告がきている。明確な証拠を掴み、騎士団を呼ぶまでが仕事だ」
アカリは手渡された資料に目を通していく。
医療部門に関係している貴族。医者というわけではなく、出資者という扱いが近い。
光の国の医療部門は合法的に危険な薬物を所有できる。だが、それは病院内などに限定され、個人の所有、持ち帰りが認められているわけではない。
「(またいつものか)」
うんざりしながらも、アカリは隊長の指示を聞いていき、明日の作戦に備えて準備を始めた。




