表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1110/1603

18x

「さて、これで少しは勝負できるかね」


 戯言を、と思ったヘレンだったが、急激に上昇した魔力に驚愕した。


「これでは止まりませんわ。あの方は、《器崩し》も使っていますの」

「器……崩し?」

「ソウルの(かご)である肉体を崩壊させ、内部の力を外部へと開放する術ですわ。現状、これを実用的に用いる手段はありませんの」

「外部に力を放出するのであれば、事前に配置した《魔導式》を起動させるくらいしか……ありませんからね」

「そうですわ。でも、それでは割が合いませんの――ですが、あの方は例外ですの」


 爆発的に上昇した魔力は、この器崩しによって発生したもの。

 そして、彼女自身の能力はまだ完全に起動していない。


 第二波と言わんばかりに、莫大な魔力がさらに一段階上昇した。


「これが……一人の人間が放つ魔力!?」

「これは予想以上ですわぁ。一個体がここまで莫大な力を保有できるなんて」


 アカリの放つ魔力の量は、それこそ召喚された天使に匹敵するほどだった。

 純粋な《星》のそれさえ優に上回り、天使と比べても劣ることのない量。おおよそ人間に収まりきらない規模である。


「敵に塩をやっちまったねぇ」

「……いえいえ、これは面白い(もよお)しですわ。あなたの能力が切れるのが先か、ライカちゃんが負けるのが先か……さぁ、わたくしを楽しませてくださいまし」


 異様に高揚しながらも、ペースを崩そうとしないライムを不気味に思いながらも、アカリは人間とは思えない跳躍力によって天使に迫る。


「本当はこういうこと――したくないんだけどねッ!」


 プリズム光を思わせる力を纏いながら、彼女の蹴りが天使の翼に命中した。

 それ自体が馬鹿げた破壊力を持つ翼に触れながらも、彼女の足は僅かにも傷つかず、力の拮抗が発生する。


「素晴らしいですわ! 天使の力にさえ触れられるなんて!」


 感嘆の声など耳に入れず、仕事人は第二撃目の蹴りを放つ。

 一発、二発を打ち込むが、翼が僅かに後退する程度で明確なダメージは与えられなかった。


「(やっぱり、正攻法じゃ通用しない、ってことだねぇ)」


 三発目の蹴りによって、アカリは自ら戦闘領域から離脱し、核の役割を果たすライカを見た。


「(こっちの最高火力でビリビリ姫を打ち抜けば……勝てるかもしれない)」


 だが、そこには大きな問題が存在していた。

 地面に着地すると、着地点を予測していたフランクが近くで待機していた。


「おぉ、ちょうどいいところに。ちょっと頼みがあるんだけど、いいかい?」

「了解した」

「まだ言ってもいないんだがねぇ」

「時間稼ぎ、だろう」

「察しのいいことで」


 そう言うと、銀の人はその場から離れようとした。


「ちょい待ち。この作戦、一つだけ大きな問題があるんだけど」

「……」

「あたしの最高火力を叩き込めば、ビリビリ姫を仕留める自身はあるよ。でも」

「……」

「そこに到達する前に、力が切れるかもしれないってこよ。そうなったら、ごめんってことで」


 フランクは呆れたような反応を見せたが、すぐに頷き、戦場に向かって走って行った。


「姫様が死んじゃうかも知れない、ってことを心配さえしないってのはドライだねぇ」


 そう言いながらも、彼女自身さえそれを気にしていなかった。

 生き残る為に、手心を加えている余裕はないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ