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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1100/1603

 別働隊の面々は移動を続け、アルバハラの銃製造工場に到達した。

 魔力を察知できるものがいるならばまだしも、ここにいる人間は全て民間人である。その上、彼らは休憩時間以外は工場内から出ることはないのだ。


 外部で見張りをしている兵隊達についても、幻術の(とばり)に覆われた軍勢を察知する力はなく、監視の意味を成していなかった。

 あまりにも隙がありすぎる監視のようにも思われるが、そもそもこのレベルの幻術、気配隠匿の術は使われていなかったのだ。対応しろというのは酷な話である。


「では、兵器を配備します」

「ええ」


 ライムに確認を取ると、ヘレンは部隊の面々に命令を下した。

 すると、速やかに大きな御輿(みこし)が運ばれてくる。

 その御輿は大人が四人は座れるであろう、という大規模なものであり、運搬する人員も相当数用意されていた。


 兵器は丁寧に運ばれていき、ヘレンらが見て点になるほどの距離にまで移動すると、地面に設置された。

 運搬係の者達はすぐさまその場を離れ、部隊に合流する。

 これが手際よく行われ、気配の隠蔽も続行されていたこともあり、工場側に気付かれることもなく完了した。


「巫女様」

「起動しますわ」


 ライムの身より莫大な量の魔力が放出された瞬間、見張りを行っていた警備軍が驚いたような反応を見せ、武器を構えた。

 しかし、それは意味がなかった。


 刹那、御輿の内側から凄まじい雷撃が迸り、工場目掛けて一閃が放たれた。

 初撃は斜め上に放たれ、勢いに負けるかのように天へと軌道を逸らしていく。


 たった一度の攻撃。にもかかわらず、工場上部は斜めに切り取られ、角を取られたような形となった。


「おぉ」

「これが我らが兵器の力……」


 部隊の面々からも感嘆、驚嘆の声が上がる。


「全ては計画通りの進行……今より第二段階に移行、各自散開し、敵の要地を破壊せよ」


 ヘレンの命令を聞き、軍勢は無数の部隊に分かれ、移動を開始した。

 田畑の焼き討ち、工場の破壊だけではない。彼女の兵站攻撃は、この国に致命的なダメージを与えるものだった。

 この場に至るまでに、ヘレンは多くの手を打ってきた。

 兵からの信望を集めていたカッサードに対し、自分の求心力は低いと判断するや否や、彼女は裏方に徹し続けた。

 彼の用いる王道の――古くさい戦術では大きな成果を出せないと判断し、二軍の大部分を請け負うことでカッサードの指揮から完全に離脱した。

 勝ちに行く戦いならばいくらでも策はあったが、彼女は職務に忠実で、ただ着実に成果を出すことを選択したのだ。


 成果を出す為、ただその為だけに戦いが長引くことも受容し、カッサードの戦術にも口を出さなかった。

 その代わりというべきか、ヘレンは自身の麾下(きか)である第四部隊のほぼ全てを万全の状態で維持し、この最終局面での奇襲の機会を待っていたのだ。


 今までの戦いは補給路の破壊だけではなく、その要地を探る戦いでもあった。

 故に、この大奇襲に際しては彼女が落とすべきと判断した地点へ、事前にある程度の兵が配置されている。


 ライムが死に(たい)の兵達を奮起させ、幻術によって数を水増しさせた幻影軍勢。

 カッサードが死力を尽くし、逆転を狙った本命の作戦、主力による首都襲撃。

 その二つによって兵力の配置が崩れた瞬間にこそ、彼女の策は目覚め、暴れ出すのだ。


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