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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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 ――アルバハラにて……。


 ハーディンの屋敷に足を運んだアカリは、迷いなく家主の部屋へと向かった。

 彼女の活躍は屋敷からでも確認できたらしく、協力者の富豪は感謝をもって出迎えた。


「あなたが来なかった危なかった。本当にありがとう」

「礼には及ばないよ。それより……さーて、あたしゃ活躍をもってあんたらを守ってやったよ。さ、そろそろ逃げる手段を教えてはくれないかねぇ」

「それは宝具の船だと――」

「そうじゃあない。どこにあるか、ってことさ」

「……まだ様子をみるべきだと思いますが」

「あたしがあそこで戦ったことは、ここからでも見えただろう? なら話は早い――このままじゃ、そう遠くない内にあたしを捕縛する連中が来る」


 この発言を聞き、ハーディンはようやく状況を呑み込み、頷いた。


「彼らが密告すると」

「むしろ正当な報告だと思うがね。なにせ、あたしゃ御尋(おたず)ね者さ。っても、警備軍の連中が黙ってたところで、善大王サマは計画の狂いに気付くことだろうさ」

「意外ですね、あなたがそこまで評価するとは」

「馬鹿にしているつもりかい? あの男がこの国でやったことを考えれば、その能力を低く見積もるのは無想家くらいのものさね」

「確かに……」

「救援を求められ、民兵を有効戦力に育成することを優先する辺り、善大王サマは緻密(ちみつ)な計算をして動いているはず。あの戦場にしたって、あたしが必要不可欠だったかは微妙なところだしねぇ」


 アカリは善大王を嫌ってはいるが、彼の計画性を度外視したりはしなかった。

 それは彼女が夢想家ではなく、現実主義者だから――というだけの話ではない。

 善大王の裏には、シナヴァリアがいる。だからこそ、その能力の裏付けをとることができた。


 一通りアカリの意見を聞き終え、ハーディンは理解した。


「それで急いている、というわけですね。分かりました――ちょうどガルデンでの戦いも終わったことです。彼を呼び寄せましょう」

「……前に言ってた運転手のことかい? できりゃ、早めに立ちたいんだがね」

ケースト大陸(あちら)に向かった後、あなたはヒルトをずっと守ると約束できますか?」

「ま、仕事の範囲は守ってやるさ」

「そういうことではありません。私が言っているのは、あの子に付きっきりになれるか、ということです」


 明らかな無理難題を前に、彼女は頭を掻いた。


「そんなのできるわきゃないよ。あんたから軍資金を受け取っておくにしても――」

「その為の人員ですよ。彼がいれば、あなたの手が空いていない時も守れる」

「ハッ、随分過保護なことだねぇ。それに、向こうの貴族サンに囲んでもらうなら、心配はないんじゃないかい?」

「……あの大陸は、組織が最も盛んに動いている場所です。少数精鋭の暴力ではなく、多数による内々の支配ですが」


 初耳の情報を受け、アカリは目を大きくした。


「ちょい待ち。それじゃあアレかい? あたしらは魑魅魍魎の巣に逃げていくってことかい?」

「そうなりますね。ですが、あちらの戦力はこちらと比べれば相当に劣ります。あなたほどの実力であれば、難儀することはないでしょう」


 常識人の皮を被り、途轍もない無茶を要求してきた。

 これには仕事人も驚きを隠せなかったらしく、しばらく呆然としてからソファーに腰掛けた。


「ま、こっちじゃ指名手配喰らってることだし、向こうの方がマシかもしれないねぇ――それで、いつ頃()つんだい?」

「早ければ明日にも」


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