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――雷の国、ラグーン城にて……。
「一応、両方の手は打てたが」
「ん? どうしたの?」
報告を受けた善大王は頭を抱えた。
「アルバハラからの報告が妙なんだ。まるで別の部隊が救援にきたような……想定外の戦力上昇が見られた」
「報告で分かるの?」
「決着があまりにも早すぎる。俺としては何日かは戦闘が続くと見ていたんだが、あっという間に戦闘が終了した」
「確かに、おかしいね」
「一番妙なのは、その何かしらの要因を隠していることだ――」
「じゃあ私が調べよっか?」
「……いや、提案はありがたいが遠慮しておく。連中が隠そうとした以上、それに探りを入れるのは得策じゃない」
人智を越えた力の乱用は、人間として決定的な何かを壊していくことになる。
隠し立てが一切できないともなれば、機械的な指揮から一転し、恐怖による支配となるのだ。
とはいえ、不明瞭な情報をそのままにするのも得策とはいえない。
「じゃあ、アルバハラの人に聞きに行けばいいんじゃない?」
「通信で聞くならともかく、現場に赴くのは無理だ。なにせ、ガルデンの方では戦闘が続行いているんだからな」
「ラグーン王に任せるっていうのは?」
「順当に考えればそれが正解だ。ただ、中途半端に指揮権を散らすと後々面倒になる……それと、この序盤の内に恩を売っておきたい、ってのもあるな」
フィアは理解度五割といった様子で頷き、次なる質問を投げかけた。
「でもライト、誰かが助けに来たって言うならそれはそれでいいんじゃないの?」
「プラスなら看過できる、ってことはないんだ。むしろ、その戦力を前提にすると色々と計画がブレる。その戦力がこっちの指示通りに動いてくれるなら、話は別だが」
それはあり得ない、という意味で彼は断じた。
しかし、善大王は救援の正体がうっすらと見えていた。
「ラグーン王と会ってくる。この草原の事情なら向こうの方が詳しいだろうしな」
「私も行こっか?」
「そうだな。たまには外に出るのも悪くないしな」
「むぅー……私だって散歩くらいはしてるよー」
不機嫌になったフィアの頭を撫でると、彼女の小さな手を握った。
「さっさと用事を終わらせて、城下町で何か食べに行くとしよう」
「おっ、いいね!」
軟派な提案だが、善大王の気が緩んだということではなかった。
むしろ、長らく城で様子を窺う日々が続いており、彼自身も少なからず消耗し始めていたのだ。
判断能力を維持する為、ほどほどの休息を取る。彼は自己管理の考えを忘れてはいなかった。




