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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1066/1603

10

 ――雷の国、ラグーンにて……。


「闇の国が攻めてくるって本当か?」

「なんでも定期船の乗客達が艦隊を確認したって話だ。幸い、見つからずに突破できたみたいだが」

「くそ、俺もその船で逃げりゃよかった!」


 善大王とフィアは唖然としていた。

 船を借りてさっさと戻ろうとしていた矢先、闇の国の侵攻などという予期せぬ戦いにかち合ってしまったのだ。


「なぁ、フィア……もしかして俺って呪われているんじゃないか?」

「呪いに運命を変えるような効果はないはずだけど」

「……いや、そういう話じゃなくてだな。こんなに厄介事と相対するなんてそうそうあることじゃないぞ」

「言われてみるとそうだね」


 随分と気楽なフィアとは対照的に、彼は驚くほどに呆れかえっていた。


「(こりゃ、謝罪だけじゃ済まなそうだな。さっそく、借りを返さなきゃならないわけか)」


 後回しにする気だった善大王はげんなりとなりながらも、王城を目指して歩き出した。


 騒ぎの真っ只中(ただなか)にある城下を足早に抜け、小さな相棒とはぐれないようにしながらも、等速で歩く以上の速さで城へと到達した。

 今回は出し惜しみナシとばかりに、彼は右手の甲を番兵に見せつけた。


「善大王だ。ラグーン王と話がある」

「……しばらくお待ちを」


 反応がいまいち冴えないことを確認し、彼は現状を再認識した。

 番兵が門近くの小さな扉を潜っていくのを確認すると、フィアは小声で「なんか愛想悪いね」ともう一人の番兵がいることも気にせずに不満をこぼした。


「そういうことを言うもんじゃないぞ、と。ってか、愛想悪いのはお互い様だろ」

「ライトも確かに冷たい態度だったしね。急いでいるんだろうけど」

「……お前に言ったつもりだったんだがな、フィア。いや、まぁそれは後回しだ」

「えっ」


 今にも不満を言い返そうとした矢先、小さな扉から番兵が――ではなく、少しやつれ気味なラグーン王が直々に現れた。


「ラグーン王が直々に、か」

「それはこちらの台詞ですよ。善大王様が直々にラグーンに訪れてくださったこと、感謝いたします」


 この発言を聞いた時点で、彼は口許を緩め、視線を逸らした。悪い予感が的中してしまった、という顔だ。


「立ち話もなんですので、どうぞこちらへ」

「あ、ああ……ご丁寧に」


 他人行儀な善大王――とフィアを連れ、三人は謁見の間へと向かった。

 この場に護衛が一人も付いていない、という状況は明らかに異常だった。無論、善大王はそれに気付いていた。


「(俺達を試しているのか?)」

「(それもあるけど、かなり自暴自棄みたい……昔の私みたいに)」


 勝手に心を覗くな、と言うこともなく、彼は「(やはり、ライカを失ったショックが大きいってことか)」と思考で返答して見せた。


「それはそのはずだよ。ライカがいないのに闇の国に攻められるなんて、もうどうしようもないって思ったりするでしょ? それに……大切な人と会えないのは……すごく、辛いんだよ」

「神姫様には全てお見通し、ですか」


 フィアはビクンと体を振るわせ、ラグーン王ではなく善大王に頭を下げた。

 彼はそれを正させ、王に向かっても謝罪するように仕草で伝えた。


「いえ、そこまで(したた)かならばと護衛も連れていないのですよ。あなた方の実力は理解しているつもりです」

「済まない、ラグーン王」

「それは、なにに対しての謝罪ですか?」


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