第-1004話 一件落着
地下洞窟で何やら怪しい魔術実験をしていた男、ガレインを本の中に封印する事に成功する王女達でした。
「……にしても、ほんと凄いなあ、サラは……」
事態が収束し、一息ついた所で王女はガレインが封じ込められた分厚い本を手に持っているさららを見つめた。
「まさか封印術をあんな短時間で仕上げるなんて……上級術だよ」
「この本がわかりやすかっただけよ」
もう一方の手を上げ、さららは逃げる途中で本棚から引き抜いてきた魔術本を彼女に見せる。
「それでその本、どうするんだ?」
ルルゥが問いかけた。
「……持って帰って、大魔城で保管する?」
「えええっ! やだよそんなの! 人が中に入ってる本なんて、気持ち悪い!」
さららが提案したが、それは王女によってあっさりと却下されてしまった。
「でも、さすがにしばらく経ったら解いてあげないと。ずーっと本の中じゃかわいそうよ」
「それはそうだけど……」
「えーと解封術は……」
さららは封印を解く術を確認しようと魔術本をぺらぺらと捲り始める。その様子を見ていた王女には彼女が手と目を動かしながらしだいに顔を青ざめさせていくのがわかった。
「……」
「……どうしたの?」
「……載ってないわ……」
「……え?」
「……だから、解封の術……載ってない……」
「……」
沈黙。
「……つまり、あのガレインとかいうおじさんは、ずっとこの本の中?」
「術が勝手に解けない限りは……」
「……勝手に解ける事ってあるの?」
「魔法陣が歪だったりして術式が乱れてたら、可能性は……」
三人は揃って本棚を見上げた。そこには見事なまでに立派な魔法陣が描かれているのである。
「……見た感じ不自然な所は無いね……」
「さすがサラだな」
「……出来栄えに結構自信あったし」
「……」
「……」
「……」
「……この本は大図書館に寄贈しよう。人が封印された世にも珍しい本だもの」
「……嫌がらないかしら」
「拝観料を取ればなかなか稼げるんじゃないか」
「……」
という訳で、本を持ち帰りたくない王女たっての希望でこの本は大図書館に寄贈される事になった。館内に戻った彼女らは職員に地下で体験したありのままを話し、本を託した。職員は寝耳に水といった様子で、ただただ困惑していたが、本は厳重に管理される運びとなった。これにて一件落着である。
……千年の歳月を経て、棚の整理、及び清掃のためこの本が外に持ち出された際にたまたま発生した次元の歪みに巻き込まれ境界へと流れ着き一波乱を起こすのは、すでに語られている通りである。
そういえば、あのおじさんは一体何の術を研究していたんだろう。王女は気になってさららに尋ねてみたが、彼女は少しの間黙り込んで、続けてわからないとかぶりを振るだけだった。まあ、多くの人を犠牲にしていた事からとてつもない術なのだろうが、術者自身が封印されてしまった以上、さして気にかける事でもあるまい。後の事はガトールに任せよう。
全てが済んだ後で、キルトが彼女らを見付けて駆け寄ってきた。
「王女様方、探しましたよ」
「……役立たず」
「え」
すっかり旅行気分ではなくなってしまったが、これから一行は残りの時間を楽しむのであった。
この日、王女は強く感じた。この三人は最高の仲間だと。きっとさららもルルゥもそう思っているだろう。三人でいればどんな事でも乗り越えられる気がした。彼女らはそれだけ深い絆で結ばれているのだ。戦争中である事も、種族の違いも忘れ、ずっとこの三人でいたい。王女はそう願っていた。
そう、願っていた。
今回は短めですが、このエピソードのエピローグ的な回なので……。思ったより長くなっちゃいましたが、この過去のお話もそろそろお終いです。





