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●しろくろ○  作者: 三角まるめ
追憶編
87/150

第-1006話 作戦会議

秘密の部屋に隠されていたのは大量の本と人骨……そして図書館へと戻ろうとした王女達の前にひとりの男が立ち塞がる……。

「貴様ら……見たのか?」

 男は王女達三人の顔をじろりと眺め回す。

「……!」

 初め、王女は彼を大図書館の職員かと思った。だがその推測は外れているとすぐにわかった。服装もそうだが、雰囲気が明らかにそれではないと判断したからだ。凍てつかせる様な眼差しには、少なくない邪気を感じる。ただ者ではないと瞬時に理解出来た。彼女の後ろにいるふたりもそれは同じの様だ。

 そこで改めて王女は彼を観察した。肌の色は茶。癖の付いた長い黒髪は背中まで伸びている。ローブを着ているのだが、そういえばこの男、先ほどキルトが図書館を出て行く時にぶつかった人物ではないか……?

「見たのかと聞いている」

 自らが発した問いに誰も答えなかったため彼は再度尋ねた。

「……見たって、何を? 魔法陣……? それとも人骨……?」

 王女はつい先刻見た物を口にする。溜め息混じりにルルゥが呟いた。

「……馬鹿か」

「え? ……あ」

 実物を挙げなければ何も起こらずにここから逃げられたかもしれないものを、わざわざ墓穴を掘ってしまった。

「……やはり……見たのか……」

 ぞくり、と三人の背中に恐怖が走る。やはり自分達は、見てはいけない物を見てしまった様だ……。

「……あれ……おじさんが作ったの?」

「おじ……おじさんじゃない! ガレイン様だ!」

 急に男は子供の様にむきになって叫んだ。

「……ああそうだ。ここは俺様の実験場だ……やはり基本的な施錠術ではなくもっと用心しておくべきだったか……」

「実験……何の?」

「いちいち貴様に説明する理由などあるまい」

「……あの骨……人のだよな」

 代わってルルゥが聞く。

「全部その実験とやらに付き合わされた(・・・・・・・)のか……?」

「……」

 ガレインは何も言わずににやりと笑った。

「貴様らもこれから仲間入りだ」

「……!」

 ……この男は……やばい! 王女がそう確信したと同時にさららは彼女の腕をぐいと掴んで後方へと走り出す。ルルゥも倣った。

「うわっ!」

「逃げるわよ!」

 途中で彼女は棚の端の方に収められていた本を適当に引き抜いた。勢いで近くの三、四冊が地面に落下する。

「あっ! 貴様俺様の大事な本を!」

 王女がふと振り返れば彼は律儀に落ちた本を魔術で浮かせて元の場所に戻していた。さららもそれを認めるととっさに擦れ違う本棚全てから本を引き落としていった。


 彼らは二番目の書庫に着いた所で一旦足を止めていた。ガレインの姿はまだ見えない。ゆっくりと追って来ているのか。適当な本棚の陰に身を隠した。

「やっぱり、入らない方がよかったじゃない!」

 さららの声からは珍しく焦りが伝っていた。

「でっ、でもっ、サラも途中から先に進みたがってたじゃない!」

「うっ、それは……!」

「あの男、確実に危ない奴だな……」

「おっ、奥にあった骨って、みんなあいつの実験で殺されちゃったの!?」

「そう言ってたわね。いや、言ってはなかったかしら」

「あっ……あたし達もじきにあんな風に……!? この中を見ちゃったから!?」

 取り乱す王女。

「落ち着きなさい! そうならない様にするしかないでしょ!」

「どうやって!?」

「……戦うしかないだろう」

 彼女とは正反対に、落ち着き払った様子でルルゥは答えた。

「たっ……戦う!? あんな怖い人と!?」

「……ずいぶん冷静ね、ルルゥ。凄いわあなた」

「命を狙われるのはこれが初めてじゃないからな」

「そうだったわね……」

「けど、勝てるの……?」

「別に勝つ必要は無いだろ。この外に出られさえすればいいんだ」

「だけど、簡単に通れそうにはないわよ……凄い魔力の使い手って感じがぷんぷんしたもの」

「いざとなれば、俺が『ゆらぎ』を使って……」

「駄目」

 ずっと怯えていた王女はこの言葉を聞いた途端に顔色を変えた。

「その力は使っちゃ駄目……! だって……だって、そうしたらルルゥ消えちゃうかもしれないんでしょ……?」

「……だけど……」

「そうね。そうしない様に考えないと」

 思案しながら手に持っていた本をさららはぱらぱらと捲り始める。

「それ、さっき取ったけど、何で?」

「魔術の本。色んな術が載ってるから、使えそうだと思って」

「なるほど」

「とりあえずルルゥは今の内にこの書庫の本を片っ端から地面に落としていって」

「……わかった」

「? そういえばさっきもしてたわよね……何で?」

「この本を取った拍子に何冊かの本が落ちた時、あの人、律儀に全部元の場所に戻してたわ。俺様の本を、って。よっぽどの本好きみたいね……それか整理好き……あの状況で、まあ余裕はあるんでしょうけど、あんな事をするくらいには、ね」

「だからまた散らかしてってる訳?」

「少しでも時間を稼げるかなって」

「……」

 あのわずかな時間でさららはガレインという男の性格、性質を分析している。鋭い観察眼だ。やはり凄い……。

「何かいい術あった? ……見た感じ、上級のも載ってるみたいね」

「けど、私にそんな魔力無いわよ」

「あたしじゃあまだ練れないしね」

「使うとしても魔法陣……でも、当然時間もかかっちゃうし……」

 ここで魔術について説明を加えておく。魔術の使用方法は二種類存在する。体内構築と術式構築である。体内構築とは、文字通り体の中で魔力を練る方法だ。魔力を操作し、(頭の中でイメージした)特定の形に組み上げる事でそれに応じた術が発動すると考えられている。この際呪文の詠唱は不可欠ではないのだが、言葉として発した方が集中力が増し、より精度の高い形に仕上げられるとされている。精度が上がればそれはそのまま術の効果に反映され、安定した術を行使する事が出来るのである。強力な術はそれだけ使用する魔力の量が多く、人が持つ魔力量は違うので、扱える者と扱えない者とが出てくる。それに加えて組み上げるべき形も複雑になるため、魔力を練る技術もさらに必要になってくるのだ。さららはこの「形を作る技術」が高いのだが、人間のため体内に宿している魔力の量が悪魔の平均的なそれよりも少ない。逆に王女の場合は魔王家のため()の悪魔よりも膨大な魔力を持っているのだが、組み上げる技術が稚拙なのである。

 しかし、このどちらも補う事が出来るのが術式構築だ。体内構築でいう魔力の「型」を、この場合は文字や記号、図形の組み合わせで代用する事が出来る。多くの場合が図形を用いた「魔法陣」である。こちらでは体内構築で言う魔力量は術式が書(描)かれる範囲や規模、型はその複雑さで表す。式という目に見える形として定まっているため術は安定するのだが、デメリットとして体内構築に比べて術式を作る時間が遥かにかかる事が言えるだろう。

「それに、成功しても倒れなかったら……なんて事を言い出したらどうしようもないわね。賭けるしかないか……」

「じゃあさ、倒さなかったらいいんじゃない?」

「え?」

「だから、倒すんじゃなくて、動きを止めるとかさ……そういう術も載ってるんじゃないの?」

「……! ……まさかあなたから助言をもらえるなんて思ってもみなかったわ……! さすが私の親友」

 さららの目の色が変わった。何かを思い付いた様に本を捲る勢いを増す。

「……あった、これよ!」

 とあるページを指した。

「……トラップを仕掛けるわ」

「トラップ?」

「終わったぞ」

 その時作業を終えたルルゥがちょうど彼女らの元に戻って来た。さららは説明を始める。

「このまま奥まで逃げましょう」

今回長い間不明だった(笑)魔術の仕組みに触れました。あんまり深くは考えていなかったんですが、びっくりするくらいしっくりくる仕組みを作れました。自分自身驚いています。

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