番外編 新たなる変人
頬を撫でる風は冷たい。日が暮れるのも早くなり、夕方もずいぶんと短くなった。ふたりが暮らす街に、冬が訪れていた。
シロとクロは賑わう繁華街を歩いていた。どの店にもリースや鈴などの飾り物がされている。軒先には小さな木も置かれていた。
「クリスマス、か」
先日のハロウィンと同じく、世界中で催されるイベントらしい。プレゼントをもらえるとか。
「何か、うきうきしてくるね」
そこら中を見回しながら少年の隣を歩くシロが言った。
「そうか?」
「みんな楽しそう。みんなが楽しかったら私も何だか楽しくなってきちゃう」
「……」
こいつはほんとに、王女の鑑だな……俺にはわからん。
などとクロが考えていると、彼女の表情がふと変わった。
「あれ」
「? どうした」
「……あれ」
ふたりの目に奇妙な男が映った。赤と緑のツートーンカラーの全身タイツを着用し、顔にはソックス……この光景、どこかで見た事がある。
「げ」
彼は思わず声を出した。
男はふたりに気付かないままゆっくりと近付いてくる。
「……あ、こっちに来る。ねえクロ、あの人って……」
「に、逃げるぞシロ」
「? どうして?」
いや、だって……。
などともたもたしているもんだから、あっという間に彼はふたりの目の前にやってきたのだった。
「あの……」
「ん?」
シロの声に気が付いた様に男の目線が下がる……おいシロ、何でこっちから接触しちまうんだよ。
「やあやあ。これはこれは、かわいいお嬢さんに坊やだ」
彼はふたりを初めて見る様な口ぶりで話した。
「あの……ハロウィン仮面さんですよね?」
「ん? ハロウィン仮面? 誰だいそれは?」
「お前だよお前。この変態」
「は? 私? 私がその……カフェイン仮面とか何だとかいうのだって?」
「え? 違うんですか?」
「違う違う。それでは自己紹介をしてあげよう」
ソックス男は体を大きく動かしてポーズをとり始める。
「我が名はクリスマスク! 人知れず街の平和を守る者だ!」
「ハロウィン仮面さんですよね?」
「違う! クリスマスク!」
「変態だよな?」
「ちがあう! ク・リ・ス・マ・ス・ク、だっ! 今はクリスマスを前に街が浮ついている。そんな時こそきちんと防犯が必要なのだ! 私はこうして街を見回る事で治安を守っているのだ」
「やっぱ変態じゃん!」
「犯罪者を見付けた私はこう言うのだ。お前の残り少ない命に、メリー・ワン・タイム! とね」
「はーいメリー・クリスマース」
最早お約束。現れたのは警官だった。
「おお!? あれほど断っておきながらやはり私の力が必要だと感じたのか? ふっ、さすがの私も今度ばかりはすぐには首を振らないぞ。はっはっは、はっはっはっはっはっ……!」
ずるずるずるずるずるずるずるずる……。
「……もういいよ……」





