番外編 舞い降りた変人
秋も深まる頃。シロとクロはお馴染みの駅前商店街に買い物に来ていた。週末のアーケードはいつも以上に賑わっていた。その理由は。
「あ、ねえクロ。あれ」
「ん?」
シロに促されて彼女が指差した方をクロは見ると、そこには「仮装をしている人にお菓子をプレゼント」と書かれたプラカードを持った、コスプレをしている若者が立っていた。
この日はハロウィンだった。偶然にも休日と重なっているのだ。詳しい起源は知らないが、仮装して楽しむイベント、というのがふたりがハロウィンに対して持つ印象だった。このアーケードでも仮装パレードが行われたそうだ。
「……俺達仮装なんてしてねーぞ」
「あるじゃない、これが」
シロはバサッと翼を広げる。文化祭の時の経験を思い出したのだ。
「なるほど」
クロもそれに倣った。ふたりはその姿のまま若者に話しかけ、クッキーやキャンディーをもらう事が出来た。せっかくなのでそのまましばらく商店街を歩き続ける事にする。
「何か、変だね。堂々と翼を広げて歩けるなんて」
「文字通り、羽を伸ばすってか」
などと話していると、彼らは仮装をしている人々の中に特に怪しい人物を見付ける。
茶色の全身タイツを身に着け、顔には穴がふたつ開いた靴下をかぶる奇妙な男。
「……何だあれ……」
「何のコスプレかな」
「……銀行強盗?」
あまりにもじろじろと見つめ過ぎたのか、男はふたりに気付いて近寄ってくる。
「うわやべえこっち来た! 不審者がこっち来た!」
「やあ君達。素敵な翼だね」
男はこもった声で優しそうに話しかけてきた。表情が見えない。
「ありがとうございます。あなたは何の仮装をしてるんですか?」
おいおいシロ、何でお前はそんな普通に絡めるんだよ……。
「仮装? ふふ、ふふふふふふふふ……」
男は突如笑い始める。気味が悪い。
「お嬢ちゃん、これは仮装じゃないよ。変身だよ」
「え? 変装?」
クロが聞き返す。
「違う。変身だ」
「え? 変態?」
「変身だと言っているだろう!」
「何に変身しているんですか?」
「ふふ……説明しよう!」
彼は急に見得を切り始めた。
「人知れず街の平和を守る! 私の名はハロウィン仮面!」
「……え? 変態?」
クロのツッコミに構わず男は続ける。
「こういう日には特に様々なアクシデントが発生する! 私はそれを解決したり、事前に防いだりするため、こうして街を回って治安を守っているのだ!」
「わー、すごいんですね!」
素直に感心するシロ。
「悪さをする者には私はこう言う。トリック・オア・トリート! 降伏か制裁か! とね!」
「はーい書類送検か釈放か、署でゆっくり話そうねー」
そこに現れた正義の警官!
「おお! ついに警察から私に協力の要請が来たか! いいだろう! ゆっくりと話を聞いてやろうではないか! はっはっは……!」
ずるずるずると変態は二人組の警官に引きずられていった……。
「……平和だ……」





