第11話 イエス・イット・イズ
魔界ではひとりの少女が短い旅に出ようとしているのです。
全ての支度を済ませた少女は、軽いあいさつをするために謁見の間へと戻った。
「では、魔王様、行って参ります」
「うん。気を付けてね、フェイス」
魔王は優しく微笑んで、彼女の旅の安全を祈った。
「はい」
彼女はこくりと頷くとくるりと後ろを向い……向こうとした。
「それから」
しかし君主が言葉を付け足したので慌てて彼に向き直った。
「例の件……しっかり頼むよ」
彼の眼は鋭く光る。
「……はい」
少女は自らに課せられた使命を今一度強く心に刻みつけた。
「それでは……行って参ります」
「ああ、気を付けて」
今度こそくるりと後ろを……。
「フェイス」
「……はい!」
向き直る。
「……しっかりやるんだぞ」
「…………はい……! それでは、行って参ります」
くる……。
「フェイス!」
「はい!」
向き直る。
「本当に、本当にしっかり頼むぞ」
「は、はい! ……それでは行って参ります!」
くるり……………………ホッ。もう大丈夫か。フェイスは出口へと歩き出した。
「フェイス!」
「はっ、はいっ!」
向き直る。
「しっかりやれよ!」
「はいっ!!」
くるり。コツ。コツ。コツ。コツ……。
「フェイス!!」
「はいぃっ!」
首だけくるり。
「写真もしっかり撮ってくるんだぞ!」
「もちろんでございます!」
コツ。コツ。コ……。
「フェイス!」
……魔王様、めんどくさいです……。
彼女はもう振り向かずに部屋を出た。
ナンバリングが飛んでますが間違いじゃありません。今回書いてて楽しかったです。おまけに載せる様な内容ですね。
 





