第LⅩⅩⅩⅥ話 終局への雷槌
ベルの封印が解かれました。
数え切れないほどの回数を費やしついに三つ目のパスコードが確定した。ロックされていたフォルダーがようやく開かれ中を閲覧する事が可能になった。ギンは目を見開き声を漏らす。
「! ライアさん! 通りました!」
「!」
一緒に画面を見ていたライアもがばっと身を乗り出す様に画面に顔を近付けた。
「……! これは……やはり……!!」
そこには紛れも無く彼らが探していたものが収められていた。
ぴっ、とベルが先頭に立っていた男―――クロを撃った男だ―――に指を差す。するとその先から矢の如く電流が放たれすぐさま彼は感電をした。
「っ!」
抜け殻の様になった男の体がすとんと倒れる。意識を失ったのだ。仲間達はほんの一瞬の出来事に絶句していた。拘束から解き放たれ自由に力を使える様になった神に恐れを抱き始めていた。
「殺さぬ様加減はした……貴様らはしっかりと法に裁いてもらうからな」
「……ラ、ライアさん! こちら結界制御室! か、神が……!」
テロリストのひとりが通信を入れるが途中で言葉が途絶えた。ベルによる攻撃だ。
「余計な事は言わなくていい。神の御前だぞ」
「……う、うわあああああ!」
今度は動揺したひとりがマシンガンをベル目掛けて連射した。だが彼女は対照的に一切動じずに残りの三本の指を伸ばし掌を開いた。彼女へと飛び込んできた銃弾は全てその目の前で急速に回転を止めてぱらぱらと床に落ちていく。今この神宮殿を覆っている物と原理は同じ、電磁波動による見えない盾だ。
「神の怒りを知れ」
そう告げて彼女は靭やかに指を動かす。テロリスト達は次から次へと雷に打たれ倒れていく。そう、彼女が繰り出すのは言わば雷撃。神のみぞ身に付け扱う事を許される、両手の中指にはめられた指輪型の神装具「神槌」によって力が増幅された電撃。ある程度までなら遠隔から浴びせられる事が可能となっている。
十秒後には全ての敵が行動不能となっていた。
「……久々に見るとやっぱすげえな女神様は」
ライオネスが感心しながらうずくまるクロの元へと駆け寄る。
「今止血するからな……にしても、何でお前がいるんだよ」
「う……リオ兄と一緒だって……」
「ったく、つくづく姉の背中を見て育ってんなお前は……あの世でおじさんとおばさんとクレアが泣いてるぞまったく」
「…………そっ……か……」
「……ま、お前に何かあったら泣くのはベルも俺もフィリィもだけどな」
「そのフィリィに見送られてきたんだけどな……」
「……止めろよあいつ」
慣れた手付きで処置を済ませると彼はクロをおぶった。
「俺以外にも何人かが地下から潜入してる。騒がしいから来てみたらたまたまビンゴだった訳だ。よかったな駆け付けたのがキーを持ってる俺で」
「ああ、礼を言う。お前はこのままクロを連れて脱出してくれ」
「お前はどうする気だよ」
「奴らの残党をひとり残らず焦がしてやるに決まっているだろう」
「馬鹿言うな! 自分の立場弁えろ」
「弁えているからこそだろう。懐まで侵されたんだぞ。私が直々に手を下さなければ気が済まん」
「お前の救出、保護が俺の最優先事項なんだよ! わかったらお前も来い。あとはイージスに任せろ」
「……わかったよ」
納得がいかない顔で渋々ベルは首を縦に振った。
「……やっぱお前ら姉弟だわ」
一方外ではバリアーが消失したのが確認され、待機していたイージスの部隊が号令に続いて各方向から一斉に中へと突入を開始した。そこには変装して紛れ込んだフェイスもいるのだった。
最近展開が抑えめで申し訳無いです……。





