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プロローグ
「それじゃ、行ってくるよ」
彼はいつもと変わらぬ笑顔で言った。
「うん……気を付けてね」
彼女も無理していつもと変わらぬ笑顔で答えた。彼はそれを見て、くるりと振り返った。
「あのさ……俺、帰って来るから。またここに。必ず。絶対」
彼は力強く言った。
「当たり前でしょ。あたしだって、待ってるわよ」
彼女はいつもの口調を装った。
「ずっと、待ってるから」
「……それじゃ、天気が悪くなる前にさっさと行くよ」
彼は翼を広げ、雲ひとつない空へと飛び立っていった。
彼の後ろ姿が、だんだんと滲んでいき、やがて見えなくなった。
そして、1000年の月日が流れた――――――。