なぜここに!
『キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン』
現実逃避は無駄に終わり、ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
「チャイムも鳴ったし、今日はこれで解散。気をつけてかえりなさいよ〜」
「「は〜い」」
姫坂先生がそれだけ言い残して教室を出る。
その後に前と後ろの扉に別れて部活組と帰宅組が教室から出て行く。
前は帰宅組、後ろは部活組と、決められた訳ではないのに、いつの間にかなっていた。
くだらないことを考えて、手紙のことを頭の中から消そうとする。
だけど既に放課後である。
そんなことしても意味はない。
「はぁ、行くしかないか」
俺は席を立ち、屋上に向かう。
あぁ、階段が長い。
屋上に続く階段がやたらと長く思えるのはこの気持ちのせいだろう。
はぁ、まだつかないのか。
でもこのままつかないのもいいな〜。
などと考えで階段を上る。
だがなかなか屋上につかない。
それ以前におどりばにすらたどりつかない。
階段を上る足を見ると、
ウォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン。
機械が動く音とともに階段がエスカレーターみたいになっている。
…………。
「なんじゃぁぁぁぁこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
どこかで聞いたことがあるような台詞を叫んでみた。
叫んでる間もどんどんと下がっていく。
「エスカレーターですよ」
後ろから声が聞こえていた。
振り返ると、そこには眼鏡の位置を直している一真がいた。
「いやいやいやいや、なんでこんなところにエスカレーターがあるんだよ」
「のりで作ってみました。入学が決まったときに」
「何のりで作ってんだよ! しかも学校にこんなもん作っていいのかよ!」
とりあえずエスカレーターを歩き、下がらないようにする。
「寄付金とワイ……おっと、余計なことまで言いかけた」
「今賄賂って言おうとしなかったか!」
「そこは気にしてはいけないことさ」
「いや! 気にするから!」
「んじゃぁそう言う事で」
一真は階段を下りて行った。
何のためにこのエスカレーターを作ったのか聞けなかったな。
てかエスカレーター止めてけよ!
しかたがないのでエスカレーターを走って上る。
今頃だけどなんで下りなんだろうか。
ここだけかと思ったら次の階段もエスカレーター化していた。
はぁ、はぁ、なんか2個目スピード少し速かったぞ!
全力で走って何とか屋上の扉の前に着いた。
あいつ何考えて学校にエスカレーターなんてつけたんだよ本当に!
それにしても勢いでここまで来たがここからどうしよう……。
少し考えるが、
「考えてもしょうがない。もういっちゃうか」
ガチャン。
扉に手をかけて開ける。
最近どんどんと短くなってる気がするが……。
気にしないでおこう。
君達も気にするな!