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色とりどりの紙吹雪が青空の中を飛び交っていた。
いつもにぎやかな帝都はこの日、いつにもまして活気づいている。人々は旗を振り、声を上げ、拳を突き上げていた。道にはカラフルな屋根の露店が立ち並び、その勢いを後押ししている。
年に一度の祭典、クレメンツ・フェスティバルの日。人々は呆れるほど浮足立っていた。
「うわ、すごい声。ここまで聞こえるわね」
そんなことを呟いたのは、校門前に立つステラであった。彼女は時計を確認すると、肩掛けカバンを持ち直す。
すると隣から独り言に答える声があった。
「毎年毎年思うけど、この盛り上がりはすごいよなー」
そちらを見ると、レクシオが呆れ顔で立っていた。彼女が「おはよう」と言うと、彼は鷹揚に手をあげて返す。
「おはよう。ステラと待ち合わせしたのは、俺だけか?」
「うん。残りの面子とは、開会式の会場で合流しようって話になってる」
「……手際いいな」
言葉の応酬はレクシオが寮に帰ってから行われたものだった。取り決めの速さに感心したのか呆れたのか、少年は肩をすくめる。少女は笑うと、遠くに広がるだろう色とりどりの帝都を指さした。
「ふふっ。早く行こう!」
「分かったよ」
レクシオは苦笑して、ステラのあとについてきた。
ステラたちが働かなくてはならない学園祭は、クレメンツ・フェスティバルの二日目に行われる。よってこの一日目は、彼女らにとって貴重な自由時間なのだ。言うまでもなく、祭の帝都に繰り出す生徒がほとんどである。
大通りの人通りは少なかった。しかしそれは開会式の会場に人が集中しているからである。それさえ終われば、ここにもたちまち人が溢れることになるだろう。
「あっ」
背後からそんな声が聞こえた。ステラとレクシオは揃って振りかえる。それから仲良く声を上げた。
「ジャック、トニー!」
笑顔を浮かべる二人が、確かにいた。しかし表情はどこかやつれているというか疲れていた。
当たり前だ。つい昨日、夕方から夜中まで事情聴取に行っていたのだから。
「昨日はお疲れさん」
わけを知るレクシオがそういたわりの言葉をかけると、ジャックに笑われた。
「ああ。さすがに夜中まではきついものがあったね」
「眠いよ」
トニーも言って、目をこすった。身体はとても元気そうではなかったが、心の方は少しだけ元気になったのだろうか。昨日より明るいような気がした。
「もしかしてステラたちは、これからフェスティバルの開会式に行くのかい?」
唐突に訊かれた。ステラはうなずく。
「うん、そう。一緒にどう?」
ジャックとトニーは少しの間視線を交差させたが、やがて行こうと言って、二人の横についた。
――昨日の事情聴取。本来ならば両グループの長が行くのが自然ではあったが、あえてトニーが名乗りを上げた。ソーヤに関して何か思うところがあったのかもしれない。
オスカーも特に反対しなかったため、結果としてこの二人が延々と質問を受けることになったらしかった。ステラもかつての殺人未遂事件のおりに似たような経験をしているので、その苦労はよく分かる。
「うわ。すごいを通り越してここまでいくとひどいな」
ふいに、レクシオのそんな声が耳に飛び込んでくる。ステラも無言で同意した。
開会式の会場となる帝都唯一の広場には、あふれんばかりの人が集まっていた。明らかに地元民と思える人々から旅行客までさまざまである。見回してみると、見慣れない顔立ちの男女までいる。異国の人たちだろうか。
「これじゃああいつら、どこにいるのか分からないんじゃ……」
さまざまな言語と香りが満ちる中でトニーがぽつりと呟いた。ステラも頭が痛くなりそうだったが、さすがにそれは杞憂に終わった。
「あ、こっちだよー」
そんなことを言って人垣の後ろで手を振るブライスが、間もなく見つかったのである。合流してみれば残りの友人諸君も集合していた。
「本当は前に行きたかったんだけど、これじゃあどうあがいても無理だよねえ」
ナタリーはそう言って苦笑したが、ステラとしては前にいなくてよかったよ、というところである。
そうこうしているうちに、開会式は始まった。何も見えないのではと思っていたが、きちんと後ろからでも見える高台の上に司会者らしき人が乗っていたので助かった。
クレメンツ・フェスティバルの開会式は毎年同じ構成である。最初に二部構成となっているこの祭りの説明があり、それから主催――帝国議会の上層部、ということに一応なっている――の代表者からのあいさつがあるのだ。
これらは聞いても聞かなくてもいいし、正直長いので聞きたくないのだが、ステラたちは最後まで立ちあった。
しばらくしてすべてが終わり、最後に代表者が拳を天に突き上げる。
『ここに、クレメンツ・フェスティバルの開幕を宣言する!』
マイクを通して伝わる声が帝都中に響き渡り、それと同時に人々の歓声が響き渡った。それらはやがて地鳴りのごとき低いうなりとなり、空を震わせる。
これが毎年、帝都を包み込む熱気そのものなのだ。
短くてすみません。ストーリーの関係上こうなりました。




