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ソウルリンカー  作者: クロネコにマタタビ
1章 
13/14

第12話 訓練

暖かい…

体が優しい温もりに包まれている…

もっと…もっと……

この温もりを手放さない様にしっかりと抱きしめる

安心…そう自分は安心している

だから深く、深く、深い眠りに着く…



朝、目が覚めるとそこには母さまの大きなお胸があった

一瞬ぎょっとしたけど、直ぐに昨晩母さまと一緒に寝たことを思い出して安心した

多分母さまは今日も深い眠りに着かれるだろうから、起こすことはしないでそっとベッドから抜けようと体を動かす

…けど、頭をしっかりと抱きしめられて全く動けない

(忘れてた…)

母さまは抱きつき癖があるのだった

一緒に寝ているとこうなる事は自明の理なのだ!

「ふっ!くぬっ!」

頭をロックしている手から逃れようと僕は母さまの胸の中でもがく

「うふふ~。だ~め。離さないから~むにゃむにゃ…」

より強くホールドされただと!?

目の前のクッションのせいで痛くは無いが、父さま以上の力強さを感じる

ぐぬぬ…!

>クリュウのもがく!

しかし効果は無いようだ

>あがく!

効果は無いようだ!

>わるあがき!

…無駄でした。


「あの、母さま。起きてますか?」

「寝てるわよ~むにゃむにゃ…」

寝てるならしょうがない

(はぁ…)

僕も諦めて寝ることにする

エリナさんたちが一刻も早く救いに来てくれることを願いながら…

早く来ないかな~


「…はっ!?今坊ちゃまから救難信号を得ましたわ!乳魔女ウィンディアサマからお救いせねば!!」

「姉さん?あ~…ついに頭が…。大丈夫です!私がちゃんとお世話してあげますからね~」

「ナエリ、あなたにわたくしの事をどう思っているのかはっきり聞かなければいけないようね?」

「いつも素敵な姉だと思ってますよ~?」

「そう、それならば良いのです」

扉の向こうからエリナさん達の声が聞こえた

ナイスタイミング!

そう思いながらも僕はがっつり抱かれている

「失礼します。坊ちゃま、お目覚めですか?」

「起きてるよ~。だから助けて欲しいかな~」

胸の中でふがふが言いながら僕はエリナさん達に手を振る

「坊ちゃま!?今お救いします!!」

「あらあら~。姉さんの電波も偶には役に立つのですね~」

ナエリさん…


なんとか母さまの指を解いて拘束から抜けだした僕はゆっくりとベッドから抜けだした

それにしても母さまはこれだけ騒いでよく寝ていられるなぁ

それだけ体が睡眠を欲しているということか…

……一緒に寝たときは毎回こうなってる気がするのは考えないでいよう

僕は眠っている母さまの手を握り朝の挨拶をする

「母さまおはようございます。それでは今日も一日頑張ってまいります」

何を頑張るのかは実はあんまり解ってない

けど、何となくこう言う事が習慣になってる

「じゃ、とりあえず一回自分の部屋に戻って着替えてくるかな~」

「いってらっしゃい~むにゃ…」

「わたくし達もお手伝いします」

「うん。お願いするよ」

今日もいい天気だな~


僕は自分の体の調子を確かめるため訓練場に顔を出した

訓練場と言っても庭の一箇所を平地にならしただけの場所だ

昨日から父さまは任務でしばらく家を空けるとの事だし、他の人達もここを使いに来るのはもう少し後だ。

つまり今ここには僕しか居ない

なので、とりあえず柔軟や走り込みなどの準備運動をする


程良く汗をかいた僕は、息を整え目を瞑り“クリュウ・オルナート”に意識を向ける

目を開き、用意していた片手用の木剣を右手に基本通りの斬り、突き、払いを繰り返す

何度も繰り返していくと、肉体に違和感を感じる…

剣は軽いのに体が振り回される感じがする

(体つきが変わっちゃったせいだよね…)

動きにブレが見えた所でやめ、今度は左手でも同じ動作を行う。

これは僕の密かな特技としてるけど僕は両利きなのだ。

戦闘訓練の時は普通に盾と剣を持って戦うのだけれど、こういった単調な訓練の時はいつも交互に剣を振って練習をする

(う~ん、何か自分の体じゃないみたいだ…)

普通に動かしている時はさほど感じなかった違和感を武器を持って集中するとはっきり感じてしまう


僕はもう一度目を瞑り今度は“風間颯太”を意識する

目を開き木剣を壁に立て掛け、空手の訓練を始める

基本の突き、蹴りを数回行い体になじませてから構えを整える


(まずはイメージだ…)

“颯太”のいつもの練習通り頭の中に無手の敵を想定する

無手の敵の突きを往なしそのまま鳩尾に突きを放つ

が、やはり体が自分の突きに流されてしまう

(重心が安定していない…ならっ!)

流された体をそのままに敵と体を入れ替える

相手の足に対して水面蹴り、続けて胴に回し蹴り、そしてそのまま後ろ上段回し蹴り

「っと、やっぱりバランス感覚も悪いな」

技を放った直後に体がフラつく

その後何度か仮想敵に技を放つがどれもいまいちしっくり来ない。


「う~ん」

僕は構えを解き、どさっとその場に腰を下ろした

体に慣れてないのが一番の原因だとは思うけど…

「まぁ要訓練って事だよね」

「そうですなぁ。まぁ30点と言ったところですな」

「そっかぁ。30点かぁ…もう少し点数欲しいところだけど」

「いやいや、オマケをして30点ですぞ」

「そっかぁ。残念…ってうわぁ!?ラグ爺、いつから居たの!?」

「坊ちゃまが訓練場を走り回っている時からですな」

「最初から!?」

全然気づかなかった…

ってか何か前にもこんなことあったなぁ


目の前のお爺さんはラグ爺さんと言って、屋敷の庭師兼警備隊長さんだ

とは言ってもいつも庭の掃除ばっかりしてるのを見かけるので、屋敷の警備はしてるのかどうか知らない

たまに父さまの部隊の人の訓練を見たりもするらしいから凄い人だと思う


「それはそうと剣術の型は基本通りで大変結構ですが、さほど面白くありませんでしたな」

面白く無いって…

戦闘で生き残るのに面白みって必要なのかな?

「逆に体術の訓練は中々面白いものがありましたが、いかんせん自分も敵にも一種の馴れ合いのようなものを感じました。街中での演武ならば人気も出ましょうが、実践ではいけませんぞ?」

「馴れ合い…か」

確かに元々“僕”が練習していたのはルールで縛られた格闘技だ

その上僕自身崇高な精神を持っているわけでも無いし、自分の空手を武術だと神聖視しているわけでもない

イメージした相手も無意識に素手の敵を選択してたぐらいだ

はぁ、精進しないとなぁ

「うん…そうだね。もっと頑張らなきゃって思ったよ。ありがとうラグ爺!」

「いえいえ。そうですな、試しに私と一戦やってみませんかな?」

「ラグ爺と?」

ちょっと意外かも。ラグ爺は僕に対して口は出しても実際に戦ったりはしないのだ。

「はい。先ほどの訓練は中々面白いのですが、実践の経験不足が大きく影響してますからな。私との戦闘が想像の助けになればと思いまして」

「そっか。うん。じゃ、やろう!」

僕は飛び上がり素手で構える。

剣を持ってもいいけど、今の僕はどちらかと言うと素手のほうがしっくり来るらしい。

(これも今後の課題だな…)

体術と剣術をどっちも自在に使える様になることが今の所の目標だ


ラグ爺は先端に布を巻いた木の棒(槍?)を持って静かに構える

「まずは軽めに…」

そう言った瞬間、僕の額めがけて突いてきた!

「うわっ!」

僕は慌てて顔をひねり突きを躱す

ガッ!

と思ったら2撃目の突きがこめかみに当たる

「痛っ!」

「反応速度は中々ですが、躱してから気を抜くのは頂けませんな」

「うん!」

僕は気を持ちなおしてラグ爺に集中する

「では仕切り直して…いきますぞ。」

再び静かに構え直したラグ爺は先程と同様の突きを放つ!

僕はそのままラグ爺の懐に向かって跳びかかる

頭の横を槍が通りすぎる。

(っ!?)

その瞬間僕は嫌な予感がしてそのまましゃがむ!

頭上を槍の横腹が通りすぎる

「ほう、なかなか。」

ラグ爺はそのまま槍を回転させ石突きで僕の腹を掬い上げようとする

僕は裏拳で槍を撃ち落としそのまま跳び込む

(入った!)

槍の圏内から逃れた僕はラグ爺の腹に向かって突きを放つ!

が、ラグ爺は前蹴りによって僕を迎撃し再び距離を離される

「今のは中々でしたよ」

「けほっ、懐に入っても攻撃当てられなきゃ意味ないけどね」

ほんと一撃くらいは当てたかった


「ふむ。ではそろそろ他の皆が来ますし。最後に坊ちゃまには『敵』とはどういったものか知っていただきましょう」

「敵?ッ!?」

そう言われた瞬間、目の前のラグ爺から得も言われぬ圧迫感を感じる

これは…もしかして殺気!?

全身から汗が吹き出る

全身の血が凍るように冷えてくる

目の前がチカチカする

恐怖で歯が噛み合わない

コワイ…コワイ……

-何故恐れる?-

目の前の存在が立ち塞がるから

-目の前の者はなにをしようとしている?-

僕を殺そうとしている

-ならば奴は何だ?-

そうだ…『敵』だ!

-『敵』はどうする?-

『敵』は倒す!

「うぉああああっ!」

僕は自分を奮いたたせるため声を上げ『敵』に向かって飛びかかっていく

「自棄で向かっては死にますぞ」

『敵』が何かを言い、僕は頭に衝撃を受ける

「あっ…」

「しかし折れずに向かってくるとは…。ふふ今後の成長が楽しみですな」

そして僕はそのまま意識を手放した


Dead End

作者の次回作にはご期待しないで下さい!

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