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アクアマリン   作者: 小ナス
3/4

3.意地っ張り

 重い空気が漂った。海斗と魔法使いたちの表情には驚愕と無念が入り混じっていた。特にアリスは涙目だ。


「まあ、そんな悲しい顔をするんじゃない。昔の話だ」


しかし、これで海斗たちには問題が立ちはだかったことになる。


(ということは、魔界に行くこと反対だろうな……)


 三人の頭を不安が立ち込めた。


「父さんもいろいろあったんだなぁ……

例えばだけど、もしオレが魔界に行きたいって言ったらどうするんだ?」


海斗が出来るだけ冗談ぶったように見せかけて言った。


「そうだなぁ。父さんがこのありさまだしな。駄目って言うだろうな。」


 笑いながら父が答えた。

「ハハハー、そ、そうだよなぁ」


(やっぱりかー!)


 海斗が引きつった顔で笑うと、再び沈黙が訪れた。

しかし、母は気付いたようだ。こういう事になると鋭い海斗の母は淋しげな声で言った。


「行くのね。海斗……」


「えっ!?」


「母さん、それはどういう意味だ?」


「海斗は魔界に行きたいのよ。そうでしょ? 」


「そ、そうなのか? 海斗!」


「……ああ、うん。魔界で魔法を習いたいと思ってる。」


「な、なんだって!」


海斗の父は顔をしかめた。


「馬鹿な事を考えるな。お前はこの世界の住人じゃないか。わざわざ危険な世界に入り込む必要はないだろ」


「オレは変わりたいんだ! オレは人を助けたいんだよ!

けれども、今まで本当に人を助けられた事なんてなかった。

なのに助けた奴は負けたオレに感謝するんだ。

これほど恥ずかしい事はない。

こんな自分を苦しめる正義感なんて捨ててやろうかと思っていた。そんな矢先だ。この話が舞い込んできたのは……

オレは…父さんより強くなる! だから行かせてくれ!」


初めてアリスが口を開いた。


「そうですよ! 本人もそう言ってますし、あたし達がサポートしますから!」


父は口を閉じた。皆の目には何かを考えているかの様にも見えた。


「……お前も父さんに似て強情なやつだな。

さあ、もう父さんは仕事の時間だ。お前も学校行くんなら、早く行け」


「父さん! まだ許してくれないのか! オレは意地でも…」


「馬鹿野郎! 魔法学校に行けって言ってるんだ。 まず編入試験で合格すればの話だがな。じゃあな」


「……えっ? 父さん!?」


父は書斎の方へさっさと行ってしまった。

母が薄笑いを浮かべて海斗達に話した。


「海斗に『父さんより強くなる』なんて言われたから、意地張ってるのよ。さあ、気分が変わらない内に早く行きなさい。

試験頑張るのよ」


「う、うん。行ってくる! お前らも支度しろよ」


平治が答えた。


「支度しろって、ホウキしかないよ!」


「あ、そうか……」


 四人とも皆、どっと笑いを吹き出した。





 支度が終わって三人は玄関の前に立ち、母が送り出そうとしていた。


「じゃ、合格したらもう一度帰って来るよ。

父さんは?」


「まだすねてるわね。

あっそうだ、ちょっと待ってなさい。」


母が庭の物置の方に駆けて行った。すると、ホコリがかかったホウキを持ってきた。


「はい。これ持って行きなさい」


「あぁ、ありがとう。

…って、きたなっ! これ使い物にならないでしよ!」


「何言ってんの! 魔法使いは古い物を大切にするものよ。しかも父さんが使ってたやつなんだからね!」


「ふーん、じゃあ持ってく。それじゃあな」


「気をつけてね」


 一行は旅立って行った。

 空は雲一つなく、小鳥がさえずっていた。

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