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アクアマリン   作者: 小ナス
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1.安眠妨害

ツッコミ所満載なので生温かい目でご覧下さい。

誤字脱字、意味不明な点などがございましたら遠慮なくおっしゃって下さい。

その方がこちらとしては幸いです。

「ねえ、その情報正確なのか?」


 栗色の髪をなびかせて、少女は前方を見ながら言った。


 横にいる四角い黒ぶちメガネをかけた少年がそれに答えた。


「だって先生に聞いて調べてもらったんだよ。間違いないよ」


「それならいいけど。さあ、ゲートまでもうすぐだ。もっととばすよ!」


「あー、ちょっと待ってよ」


 静かな満月の夜。二つの影が月に映る。影はツバメのように滑空し、遥か遠くへ見えなくなった。




 沖田海斗は地元の中学に入学して二年が経っていた。


 茶系な自毛のミディアムカットの頭をぽりぽりと掻きながら、今日は一人で下校する所であった。

 しかし、海斗は運悪くも自転車置き場の陰で不良達に絡まれている生徒をみつけてしまった。


 人一倍正義感が強い海斗は、こうなっては見過ごすことができず、その生徒方へ仕方なく向かって行った。


「なぁ金貸してくれよ。三千円! いいだろ?」


「でもあなた達の事知らないですし……」


「いいじゃん。返すってって言ってんだろーがよぉ!」


「オイッ! やめろよ、お前らコイツの知り合いじゃないんだろ。」


「なんだテメーは関係ねーだろ! やる気か?」


 数人の不良が海斗に手をだしてきた。

一人が海斗を羽交い締めにすると、よけることもできずに拳が海斗の腹に勢いよく入った。


「グァッ!」


 海斗は腹を抱えて、地面にうずくまった。

 不良に立ち向かっていく勇気があるわりに、海斗は喧嘩にめっぽう弱かった。


「なんだコイツ。口だけかよ。ハハハッ」


「なぁもうめんどくさくね? 行こうぜ!」


 海斗は不良達を撃退した!……というよりは気分を変えさせた!


「あ、ありがとう。おかげで…」


「礼を言うな! オレは…負けたんだ……」


 海斗は自分の正義感と弱さの矛盾に嫌気がさしていた。


(はぁ。オレにもっと力があればなぁ)


 制服は砂まみれのま

ま、海斗は重い足取りで帰宅して行った。


 小学校までは喧嘩には自信があり、海斗はヒーロー気分だった。

 しかし、中学に入ると相手は集団化するようになる。

 それで、とても一人ではかなわなくなってきたのが負ける原因の一つであろう。


 帰宅した海斗は二階の自分の部屋にそそくさと上がって行くと、汚れた服を脱ぎ捨ててベッドにまるくなった。

 海斗は負けたことをまだ気にしていた。


「海斗! ごはんよ。降りてきなさい」


 一階から母の声が鳴り響いた。


「いらない!」


 そう言うと海斗はそのまま眠ってしまった。

 満月の夜、雲は無く、月明かりが静かな町を照らしている。




「……海斗……海斗、起きろー!」


(ん? なんだ?)


 海斗が起きると、部屋の窓を叩く音と女性の声が聞こえる。


(えーっ…夜中に声? しかもここ二階だろ……まさか、幽霊!?)


 恐る恐る窓を開ける

と、そこにはホウキに乗り、黒いマントを纏った同年代位の少女と少年がいた。


 少女は、大きな黒目をしているが欧米系の顔付きであり、栗色のショートヘアが満月に光り輝いた。

「やっほー! 魔法使い参上だぞ!」


 少年は黒髪の丸い感じの髪型で、黒く四角いメガネをかけていて、反射でよく目が見えない。


「ちょっとアリス。いきなりそれはびっくりするから! あの、どうも。けっして怪しいものではありませんよ」


 海斗はほっとした。


(はあー、なんだ夢か。めんどくさい、とりあえずベッドに戻ろう)


「あ、そう。悪いけど今日は魔法使いの夢を見たい気分じゃないので、じゃ」


 窓を閉め、海斗はベッドに戻って行った。


 魔法使いは閉められた窓を再び開けると、慌てて言った。


「あっ! ちょ、ちょっと待って! あたし達夢じゃないからっ!」


「そうですよ! 本物ですから! 話を聞いて下さい!」


 二人が窓から乗り出してきた。


「あれ、やばい落ちる落ちる! ヒラ! なんとかして!」


「いや、そんなこと言われても! アリスが押すからホウキが! うわー!」


 二人は体勢を崩し、窓から部屋の中にすごい音をたてて落ちた。海斗が並べていたゲーム、雑誌類がめちゃくちゃになった。


「あ、オイ! いくら夢でもなぁ、自分の部屋散らかされたら気分悪い

ぞ!」


「いてて。だから夢じゃないってば! よーしこうなったら」


 そう言って少女は起き上がると、手を前に突き出した。

 顔付きが変わり真剣な表情で唱えた。


「ファイヤー!」


 手の平の中心が光りだすと次の瞬間、炎が1メートル程度噴き出した。


(うおっ! すげー夢だな今回のは。だが、眠いものは眠い)


 海斗は早くこの夢を終わらそうとした。


「へへっ。これで信じなかったら今度はあなたの髪を燃やしちゃうよ。」


「アリス、それはないって。 危ないから!」


「わ、わかった。 すごいねー。信じるよ! 夢だけど、信じる! ハハハ、じゃあ明日も早いから寝るね。」


 海斗は布団の中に丸くなった。時計は夜中の一時を回っていた。


「この期に及んでまだ信じてないのね……。 よーし、こうなったら!」


「やばいって、アリス! この子はまだ普通の人間だよ! それに杖も持ってないじゃないか!」


 少女は聞く耳を持たず両手を突き出した。部屋が小刻みに揺れた。しかし、海斗は気付かず眠っている。


「いっけー! ファイヤーッ!」


 彼女の両手から、海斗が丸まっている布団を目掛けて火炎が放たれた。

 しかも、先程より激しく、コントロールがとれていない。

 布団や辺りが燃え始めた。たまらず海斗は外に飛びだした。


「アチチッ。うわっホントに燃えてるし! わかった! 本気で信じるから消してくれ!」


「よし! じゃあ後はよろしくヒラ!」


「もう、いつもこうなんだから……」


 四角いメガネをかけた少年も呪文を唱え、水のようなものをだして消火した。

 一段落して三人は部屋の床に座った。

 例え魔法使いが家にやって来たとは言え、海斗は安眠妨害、無断侵入、器物損壊、その他諸々に苛立っていた。


「それで、こんな夜中にこんな仕打ちまでして魔法使いがオレに何のようなんだ!」


 メガネをかけた少年は言った。


「夜分遅く、しかもこんなに散らかしちゃってホントすいません。

本題に入ります。

沖田海斗君、君は親が魔法使いですよね。

だから君は魔法学校に行く権利があるでしょ。

けど君がいつまでも入学しないし、君の席が空いたままじゃ気分悪いから呼びに来たんですよ」


「……オレの親が魔法使い? 学校? そんなの聞いたことないぞ」


「えっ……そんな馬鹿な」


 魔法使い達は互いに見合わせた。


「けど、オレは魔法習いたいなぁ。それって悪党とかもやっつけられるよね?」


「そりゃあ、まぁ。

じゃあ、とりあえず入学してくれるんですね。

よかったね、アリス!」


「うん。よかった、よかった。あたしの魔法のおかげだね」


 だが魔法使い達には企みがあった。


(よし! 後は入学手続きをさせれば完璧じゃん。これであたし達は……)


「あ、名前言ってませんでしたね。

僕の名は白木平次。アリスがヒラって呼んでからみんなにもそう呼ばれてる。よろしく」


 見た目通りの真面目そうな性格の平次は軽く会釈した。ヒラというあだ名にはあまり満足していなかった。


「あたしは国仲アリスって言うんだ。よろしく」


 外見の美しさとは打って変わり、微妙に男っぽい口調のアリスは海斗にニコッと笑って見せた。


「ああ、ヒラにアリス、よろしく。

けどさ、学校なんてどこにあるの?  この世の中、すぐに見つかっちゃうんじゃないか?」


平次が言った。


「それは僕が説明する。

海斗は錬金術って知ってるかい?」


「ああ、少しなら。金じゃないものを金に変えるやつだろ?」


「そうそう。錬金術は古代エジプトからあったらしいけど、

錬金術は中世のヨーロッパで大流行し、研究が進められた。

それは魔法と科学を生

み、皮肉にも二極化させてしまったんだよ。

科学の方が優位に出始めた時、魔法は追いやられ排除される方向に向かったんだよ。」


「それは魔法使いにとってはやばい状況だな」


「うん。そして、昔のマーリンという賢者は魔導士達をひそかに世界に飛び立たせ、各地に存在する魔導士達と協力して、各地の強大な魔力を持つ精霊達と契約をさせた。


マーリンはそれで得た魔力を使ったり、精霊自ら力を使ったりして、魔力を持つ者しか出入り出来ないバリアーを張った大陸を創造したんだ。」


「ずいぶんすごいことやったんだな。

確かにそんな所に学校があれば、普通の人間に見つかる事はないな」


「そういう事!そこに全国の魔導士が大移住したんだ。

もちろん、自然やそのものがもつ魔力を好む精霊や魔獣も移住したけどね」


「そっか。なんかスケールがでかいなぁ。」


 海斗が気付くとアリスが壁に寄り掛かり眠っていた。


「しょうがないな」


 海斗はタオルケットを押し入れから三枚持ち出して来た。


 一つをアリスに掛け

て、もう一つを平次に渡した。


「とりあえず、今日はここに泊まれよ」


「ありがとう。でも実は最初から泊まるつもりだったんだけどね。」


 平次はそう言うと畳の上に横になって、すぐに眠ってしまった。


(そんなに二人共疲れていたのか? それにしてもつくづく迷惑なやつらだよな)


 海斗も黒焦げの布団にはさすがに寝れないの

で、畳に寝転がってタオルケットにくるまった。


(明日の朝は父さんと母さんに真相を聞かなきゃな……)






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