透明コート、インタビュードろぼ
「プリえもん、そもそもおかしいと思わない? 我がサラバンド家はかつて王を輩出した血筋なのに、現在は継承権が皆無。3代前からの記録は非公開。そこに、王家の後ろ暗い秘密があるのではないかしら?」
「うーん、飛躍しすぎな気もするけど……」
「いいのよ、勘だわ。もし外れていても、あなたの道具でどうにでもなるでしょう?」
「げ、下剋上だぁ〜〜!!」
クレモンティーヌは「透明コート」を纏い、王城に忍び込んだ。残された時間は少ない。
(ここが国王夫妻の寝室ね。間取りからして、この裏に隠し空間があるはずだわ)
「猪令嬢」の名に恥じぬ迷いのない動きで、彼女は目星をつけた場所へたどり着いた。
(ドゥルルルッドゥルー!通り抜け輪っか!)
プリえもんから半ば強奪した「4.5次元ポケット」から道具を取り出す。壁に貼り付け、通り抜けた先。そこは、ランスゴール公国の歴史から隠蔽された真実が眠る小部屋だった。
「……見つけたわ」
3代前の資料。そこには、4代前のサラバンド家出身の王が急逝した際、「一代限り」という約束で現在のランスゴール家が王位を預かった旨が記されていた。本来、王位は再びサラバンド家の男系に戻されるはずだったが、現在の王家が策を弄してそれを反故にしたのだ。
「つまり、現王家はただの「簒奪者の末裔」。私こそが、正当な第一王位継承者。前王が継承権を女系にも広げたのだけは、唯一のファインプレーだったわね」
クレモンティーヌは不敵に微笑んだ。
「……ついでに、国王のプライベートも暴いておきましょうか」
・
裁判当日。法廷に裁判長の声が響く。
「……被告人クレモンティーヌ・サラバンド。国家反逆の罪により、絞首刑を――」
「異議あり!!」
傍聴席から叫んだのは、被害者であるはずのライラ・ボードンだった。どよめく法廷。
「裁判長、この裁判は無効です。なぜなら、裁く側と裁かれる側の立場が、事実とは逆転しているからですわ!」
ライラはクレモンティーヌが手に入れた羊皮紙を掲げた。
「現王家は王位簒奪者の末裔に過ぎません。真なる正統後継者は、今まさに処刑台に送られようとしているクレモンティーヌ様です!」
法廷は爆発的な騒ぎとなった。王太子が顔を真っ赤にして立ち上がる。
「デタラメだ! そんな紙切れ、なんの証拠にもならない!」
「では、これでいかがかしら? ドゥルルルッドゥルー!「インタビュードろぼ」!」
高貴な令嬢が謎の擬音を発したことに、一同がドン引きする中、クレモンティーヌはひみつ道具を突きつけた。
「この道具の下に、嘘はつけませんわ。真実を述べなさい! 偽りの王よ、寝室の隠し部屋に機密文書がありますわね?」
「うっ、がっ……ある!」
「本来返還すべき王位を我が物としたのは、あなたの祖先ね?」
「……そうだ!」
「嘘よ!」王妃が叫ぶが、クレモンティーヌは止まらない。
「嘘でない証拠をもう一つ。偽りの王よ、あなたの秘密の夜の趣味は何?」
「よだれかけをして赤ちゃんになりきり、妻によしよししてもらっている!!!!! 人肌に温めたミルクを哺乳瓶で」
「きゃあああああ! 止めて!!」
「……父上……」
法廷は静まり返り、やがて別の意味で騒然となった。
「……これが真実。偽りの王よ、そこを退きなさい。その椅子は、私のものです」
クレモンティーヌの凛とした声が法廷を支配した。騎士たちも、その圧倒的な「王の風格」に抗えず、一人、また一人と彼女の前に跪いていく。
「判決を言い渡すわ。有罪なのは、血統を偽り国を欺いた現王家。私はクレモンティーヌ・サラバンド。正統なる王の後継者である」
その傍らで、ライラがにっこりと微笑んだ。
「事務手続きは済ませておきましたわ。主要ポストの過半数は、既に私への支持を表明しております」
「ライラ、あなたは本当に頼りになるわね」
「当然ですわ。無能な男の尻拭いより、猪突猛進な女王の下で采配を振るう方が、よほど性に合っていますもの」
絞首台への道は、戴冠式へと続くレッドカーペットへと塗り替えられた。
【エピローグ】
『ほほほ! 大逆転ね! ありがとう、過去の私! さあライラ、隣国との会議に向かいましょう。ではね!』
未来のクレモンティーヌは、ビデオ手紙の中で最高に輝いていた。
「あのー、それで、無事に望みも叶ったことですし、寿命の半分をいただければと!」
プリえもんが嬉しそうに手を差し出す。
「寿命の半分? あげるわけないでしょう。これからの国は私にかかっているのよ」
「嫌だなあ、契約したでしょう? 君が用意した、この契約書……ん?」
「良き働きでした。感謝しますわ。では、いつかまたお会いしましょう」
「え、ちょっ、寿命のこと書いてない! 騙したなあ!」
「契約書は隅々まで読みなさい。いい勉強になったでしょう?」
「うわぁぁぁ〜〜ん!!」
☆おしまい☆




