第6話 神のみぞ知る世界
「連さんの得意な魔術ってなんなんですか?」
「どうして急に?」
魔術師でもない俺に少華は不思議なことを聞いてくる。
「俺は一切魔術は使えないぞ」
魔力を持たず魔術の才能がない俺には正直魔術協会の敷居をまたぐのは精神的につらい。だからあまり魔術協会の人とは関わり合いになるのは避けている。
「それならなんで司令にあそこまで気に入られているんですか」
「ああ、それはな、俺が精霊術を使えるからじゃないか」
「精霊術?」
「うん、簡単に言えば精霊が力を貸してくれて魔術や魔法に似たような効果を発揮できるんだよ」
「精霊って本当にいるんですか、まったく信じられません」
「いるよ、俺からしたら人間はもっと精霊を大切にして信じてあげて欲しいけどね」
「どういうことですか?」
「人間は神や精霊を恐れて自衛本能から魔術を発展させてきた点があるからな。あと、人間が他人を支配したり、戦争で銃を使わない戦い方を生み出したりな」
「だから連さんは魔術に興味ないんですね」
なんだかがっかりした顔をする少華。魔女はいつの時代も恐れられ嫌われ嫌悪されるものだからな……。まあただ、魔女にも魔女なりに戦っているんだろ。
「魔術には興味ないけど、魔女たちのことは尊敬してるよ」
「なんでですか」
「魔女たちは世界の為に人の為に戦う覚悟があるからな、たとえ他人に理解されないやり方での支配でも俺は見守ってるよ」
「見守ってるって、上から目線ですね……」
「俺は世界平和に興味ないからなあ……今でも十分平和なような気がするし」
「世の中には悪人だっていますよ」
知っている。世の中どうしようもない人間がいるのはわかる。衝動に任せて行動して他人を傷つけたり、気づかぬうちに落とし穴に落ちる人間もいる。だから、神や魔女が戦っているんだ。たぶん、俺に魔術の才能がないのは、俺にその戦う覚悟がないからだろう。そんな俺が魔術や魔法に憧れるのは間違ってる。
「魔導書が創れるのに魔術が使えなかったり、魔術の歴史に詳しかったり、なんんなんですか連さんって……」
「なんですかって言われてもな……」
俺にそれを聞かれても困る。それは天しか知らないからな。
「……天って誰ですか」
「へっ?」
「だから天って誰ですか」
「君──心が読めるのか?」
「そんなことより天ってなんですか」
ああ、俺に答えろってことか。ちょっと小細工施すことにした。
「なんだろうな?」
「ッ!?」
たぶん俺の思考が読めなくなったのだろう。ふふふ、これでも何年もの間魔女たちのもう攻撃を耐えてきたんだからな。そう簡単に思考を読まれてたまるか。
「な・い・しょ♡」
「キモい……」
女の子にキモいと言われた。結構ショックを受けるもんだな。まあ気にしてないけど。俺は魔導書を作ることに専念する。しばらく俺と少華の間に沈黙が続いた。俺はこっそりタクトに思念を送った。
『しばらく少華の相手をしてあげて』
『いいけど、あまり女の子をからかうのは良くないよ』
『知ってる、後が怖いなあ~』
『呑気なこと言ってる場合じゃないよ』
俺はさっさと魔導書をすべて作って少華を魔術協会に帰すことにする。俺はちょっとだけ少華が心配になる。俺は喋り過ぎたかもしれない。しかし、聡さんに頼まれたからな。少華を育てて欲しいと。なら少しくらいヒントをあげるのもいいだろう。




