七話 ~紹介③~
07.
遥か昔、一人の神が現れ。世界の中央に大きな樹を植えた。人々はその樹から魔力を
受け取り、体内に魔力を流入。『アーク』と名乗る。女神に魔力を形に変える方法。
魔法を習う。
以上、魔術創世記より抜粋。
「…中央に樹?そんな樹あったか?」
魔界を歩いていた時、そんな樹を見た覚えがなかった。世界の中央に植えられたというなら
魔界からも見えると思うんだが…。
「あぁ、今はない。私の先祖がぶった斬ったからな。」
「ぶった斬った!?」
創世記にも遺る樹を斬るって…。さすがは魔王だ…。
そりゃ、人類の反感も買うだろう。
「理由があるんじゃ。お父様は、詳しく教えてはくれんかったがその行為は
一族の誇りだと言っておった。私はその言葉を信じておる。」
そう言ったモルガナちゃんの目は真剣だった。
まぁ、俺は異界人。その樹がどれほどの物であったとしてあまり
関係がない。それよりも訊きたいのは…。
「樹から魔力を受け取ったのは分かったよ。でも、今はその樹はないんだよね?」
「あぁ、無い。だが、樹はそれぞれに分解された。」
「分解された? …ということは。」
大体、この世界の事情が見えてきた。
「世界樹を多く持っておる国がこの世界を牛耳っておるということじゃ。」
「なるほど…。今、世界は世界樹を巡っての争奪戦。その真っ只中という訳か。」
話が壮大になってきたな…。魔界復興って軽々しく言ったはいいが。存外、荷が重い案件
だったのではないか…?
「まぁ、世界の事情は分かったよ。で、モルガナちゃんに魔力が無いのは
魔界の世界樹を勇者に盗られた。だから、今は無いって事で当たってる?」
「あぁ。確かに魔界の世界樹は勇者に盗られた。だが、私に魔力が無いのはソレとは
関係ないぞ。」
「関係ないって…。魔力は世界樹から生成されるんだよね?つまり、世界樹があれば
誰でも…。俺にも魔力は流れるってことだろ?」
理解力は良い方だ。短い会話であったが魔力と。魔法については理解できた。
「いや、誰でもではない。魔力を受け付ける体質とそうでない体質がおる。
そもそも魔族は世界樹から魔力を摂取してはおらん。世界樹はあくまで人類に
魔力を与える。それこそ神から贈り物じゃ。」
「えっと…じゃぁ。つまりどういう事だ?」
何だかややこしくなってきた。
「詳しくは長くなるから言わんが。世界樹が植わる前。魔族には魔力が既にあった。
人類が魔法を使えなかった時代も魔法が使えたという事じゃ。」
「あぁ…。なるほど。そういう。」
言って気付く。
「…ん?ならモルガナちゃんに魔力が無いっておかしくないか?」
魔族にとって魔力とは生まれ持っての特権みたいなモノだ。ソレが無いってのは…。
「ふっ…。そうじゃ。おかしいのじゃ。魔王の娘なのにな。」
その笑みと表情。ソレが全てを物語っていた。
「さんざん言われたわ。出来損ない。不運な子。魔族失格だとかなんとか。」
「いや、それは…」
言葉が続かない。何を言っても哀れみの言葉になってしまいそうだった。
元の世界の言葉を使うなら。モルガナちゃんは 『障害者』 という事に
なろう。
「だけど、お父様とお母様はこんな私に期待してくれた。お母様は魔力がなくても
自然に流れる 魔を使っての魔術を。お父様は剣術を教えてくれた。」
だから。とモルガナちゃんは力強く、続けた。
「魔力が無くても私は戦える!勇者を倒してお父様の仇を絶対、とるのじゃ!」
その姿はとても勇ましく。年端も幼い幼女だが素直に尊敬した。
自分の短所に向き合って、逃げることなく。戦う姿は誰であろうとカッコいいものだ。
だからだろう。その想いが自然と口から零れた。
「モルガナちゃんは、カッコいいな。」
「はっ!?」
それまでの勇ましい表情とはうって変わって、いつもの幼い表情に戻る。
「私は女だぞ。カッコいいと言われて喜ぶと思うなよ!」
別に喜んで貰う為に言った訳ではないのだが…。
まぁ、いいか。
「…大体の事は分かったよ。話してくれてありがとう。」
太陽は、すっかり真上に上がり。時間としては昼をとうに迎えていた。
このまま昼食にしてもいいのだが。その前に段取りを整理したい。
スッ…
俺はポケットからスマホを取り出し、カレンダーのアプリを開いた。
何をするにも計画が大事だ。まずタイトルとしてこう書きだすとしよう。
魔界復興計画。 と。




