三十三話 ~砂漠の国 オアシス 憤怒~
33.
その昔。ドラゴンと人が暮らす国があった。しかし、その国はとある王の命により
滅ぼされる。無論、その国に住まう者も同様。ドラゴンも人も。その子供も。
全て滅ぼされた…。
ドォォーーンッ!!
派手な音が鳴り響く。カルマによる爆炎によるものだ。
周囲は炎の海。あった筈の木々は今では消し炭。そんな戦場に今は数十の兵士と
その隊長ヨルガ。そして魔王の幹部。カルマが立っていた。
「ったく。自然は大切にしろよ。」
先程、カルマが飛ばした炎を防いだヨルガは疲弊を露わに。そう呟く。
彼の顔は土埃で汚れ、額には汗が湿っていた。これまでカルマの技を数多も防いで
きた。この疲労はそのツケである。
「…っち。しつけぇな。」
最初こそ戦闘を愉しんでいたカルマだったが、数刻。異様な魔力を感知した。
方向は王宮内。流石のカルマも状況を理解した。
「炎竜の咆哮ッ!」
カルマは口内から炎を吐き出す。広範囲の炎魔法。ソレを口から吐き出す
事が出来るのはドラゴンと。その血を引く者にしかできない。
「水」
そう言うと。ヨルガを始め。皆が握る剣は水色に光を帯びた。
それから一閃。皆は剣を振るい、水の斬撃を同時に飛ばす。
斬撃は集まり、一つに纏まるとカルマが吐き出した炎とぶつかった。
「…やっぱ、強ぇなぁ。」
カルマの炎が完全に消えないのを見てヨルガは再度、剣を握る
「皆、俺の後ろに並べ。」
ヨルガは部下に指示を大きく上げると、二本の剣を両方。水色に染める。
「うりゃっ!」
掛け声を短く上げ、二本の剣も上に振り上げる。
そこから生まれたのは水の柱。ソレに威力を弱めたカルマの炎がぶつかり、
湯気となる。
「っち。」
その光景を目に。カルマは思わず、舌打ちを鳴らした。
「そんな戦い方して楽しいかよ。」
相手の狙いは分かっていた。単純な時間稼ぎ。
勇者がモルガナ等を始末するまでの肉壁だ。
「…楽しい訳ないだろ。だが、俺は騎士と同時に社畜なんだ。雇用主の命は絶対。
ソレが俺等、砂の騎士団の忠誠心だ。」
ヨルガの応えにカルマは益々、苛立った。
「だっせぇ。何が忠誠心だ。結局は王の言いなりの傀儡かよ。」
ふっ…
カルマの言葉にヨルガは口元を緩める。
「違ぇよ。俺等は王の命で動いてる訳じゃねぇ。言ったろ?
俺は自分より強ぇ奴に従うって。」
「あ?王の命令じゃねぇなら、てめぇは誰に言われて死ぬつもりだよ?」
会話による時間稼ぎと思ったが。カルマは反射的に問いを投げていた。
そんなカルマにヨルガは指を指す。
その方向はカルマの後ろ。
そして次の瞬間…。
「…ウッ!?」
斬撃がカルマの体を抉る。その威力はカルマの体を一瞬で
血に染める程のものだった。
「…ッ。…てめぇ…クソッ…ふざけんなよ…」
カルマは流血に顔を歪めながら。歪む空間から出てきた人物を睨む。
「…彼の一太刀を浴びてまだ息があるなんて流石は竜の子。硬いな。」
まず出てきたのは水色の髪を短く刈り上げる少年。リオンだった。
「……リオン。ココはもういい。魔王の子を狩に行くぞ。」
その背後で声だけを聞かす人物。その人物にカルマはやられたのだ。
声だけでも分かる。忘れる筈もなかった。
「ヨルガ。ソイツはもう虫の息だ。後は任した。」
謎の声が淡泊にカルマへ注がれる。
「了解。てか、来るの遅いですよ。マジで死ぬかと思いましたよ。」
顔に笑みを。ヨルガが迫ってくるのをカルマは感じていた。
…急所は反射的に回避できたが、傷が深い。いくら竜族の硬い皮膚。回復力でも
動けるまでには時間が掛かる。それくらい、当の本人。カルマが一番、分かっていた。
…それでも。
「悪いな。こんな不意打ちで。お前の事は嫌いじゃなかったぜ。」
ヨルガは全、魔力。氣を籠めた剣を上に大きく振り上げた。
そして剣を振り下ろす。
「…燃焼」
「ブッ…!?」
ドガシャァァーーーンッ!!!
剣は空に放り投げられ、その持ち主。ヨルガは遥か遠方に飛ばされた。
大きな音が聞こえた事から王宮のどこかの壁にぶつかったというのは分かった。
「苛つく。ムカつく。腹が立つ。あの時、どうして俺はいなかった。
どうして魔王はこんな奴に殺れた。」
「……。」
カルマの身体は燃えていた。傷も塞がり。その姿はまるで悪魔。
怒りが彼の身体を燃やしているようだった。
「英雄。今度はテメェが死ぬ番だ。」
カルマの声が響いたのか。彼の纏う魔力によるものか。
詳細は本人にも分からない。ただ、カルマは止めた。
リオンと共にモルガナの所に行こうとしていた人物の足。
魔王殺し。アスフォルト・ロイの足を止めたのだ。




