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レベル1の魔王様  作者: 猫屋敷 魂
第1章 魔族探索編

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三十話 ~砂漠の国 オアシス 一難~

                    30.


人の急所は頭部。胴体。脚部に多く存在する。中でも刃物による攻撃で一番に

狙われやすい部位は胸部。心臓や肺。次に腹部。次いで頸部(首)とされる。



空気が明らかに変わった。


『敵と見なす。』


先程、言った言葉はどうやら本気らしい。このまま、彼女の実力を発揮されるのはマズイ。

そもそも俺は先刻、彼女の技を()()()()訳ではなく、()()()()だけなのだ。


種明かしをすれば彼女が消えたと同時、俺は彼女が狙ってくる部位を予測し、

事前に動いていた。そういうことなのだ。言うなれば勘。間違えれば確実に死んでた。

正に外せれないデスゲームだったのだ。


とはいえ、単純な運任せではない。確実ではないが、高確率で当てられるだけの

根拠があった。


一つは彼女が暗殺者と名乗った事。

もう一つは彼女が俺を舐めていた事だ。


俺が彼女ならその辺のモブに時間は掛けたくない。出来れば魔力も温存したい。

となれば一発退場の即死を狙う。

故に人の急所にヤマを張った。ただ、それだけではまだ候補は幾つもある。

だが、初手はほぼ確実に予想が付いた。


胸部。心臓だ。


ロデーが刺された場所が正にその近辺だった。ヤマカは心臓を狙った筈だ。

若干のずれがあったのはロデーが刺される前に体をずらし、

ナイフが刺さる場所をずらしたと考えられる。


とはいえ、致命傷。毒も塗られてるときた。

回復までにはかなりの時間を要する。


最初の攻撃を躱した後はヤマカの目を見た。


消える瞬間。彼女が行動に移る瞬間、狙う場所が目で分かった。


だが、さすがは勇者。予測は完璧だったが紙一重。掠った攻撃も多々あった。

だから、これ以上早くされると非常に困る。


「あ、その…少し聞いてもいいですか?」


「…は?」


今にでも迫ってきそうだったヤマカに声を投げる。

()()はとっておきの切り札だったが背に腹は変えられない。



「ヤマカさんも誰かに召喚されたんですか?」



今度はある意味で空気が変わった。俺の問いにヤマカはただ沈黙を返した。

そして。手に持つ短刀を下ろし。


「……アンタもか?」


と、言った。


「はい。僕はモルガ…魔王様に。」


コレも確証は無かったが当たった。この話題でどうにか乗り切れればいいのだが…。


「そうか。よく気付いたな。」


「まぁ、そんな京都弁で話す人が異世界の人とは思えなかったので…」


理由はまだ幾つかあるが大きな理由としてはソレだ。

彼女の喋り方はどことなく|(なま)っている。この世界にそんな方言が無い事は

多数、文献を読んで認識済みだ。


「そうか。まぁ、異世界召喚や転生者は珍しくもない。私もこれまで何人か見やった。」


「そうですか…。」


彼女が俺の言葉を聞いて、表情を変えなかった理由は分かった。

ただ、それなら訊きたい事は山ほどある。  …が、今は自分勝手な質問より

この場を乗り切る質問(かいわ)が先だ。


「人を殺すのに抵抗は無いのですか?」


「…ッ。」


表情が動いた。この質問は有効とみた。

ただ、逆上されたら本末転倒もいいところだ。

膨らんだ風船を割らないよう、慎重に迫っていく必要がある。


「あっ、ヤマカさんを否定したい訳ではないんですよ。それなりに理由があっての

事だと思いますし。人の生き方にケチつける程、偉くもないです。ただ、僕はヤマカさんの

気持ちを知りたいのです。ヤマカさんは殺したくて殺してるんですか?」


ギリッ!


怒り。困惑。葛藤…。そんな想いが見て取れる表情だった。

ただ、ココで俺を殺せば俺の言葉に乗った事になる。コレまでの会話。接し方で彼女の

性格は大体、分かっていた。


負けず嫌いで他人の言葉に従うのを嫌う。簡単に言えば反抗期。


見たところ歳は高校生。大学生くらいか…?


身体は鍛えられても心を鍛えるのは難しい。メンタルを抉るつもりはないが。

俺が今、彼女に勝るものがあるとすればソレだ。

獣相手では瞬殺されるかもしれないが、人相手なら話は別。

コレまでどれだけの人を見て。接してきたか分からない。


ロデーの呼吸が大分、整ってきている。後、少し。


時間を稼ぐ。


汗が首筋を伝っていた。気付けば喉も渇いている。だが、関係ない。

焦りをみせるな。堂々としろ。

大人の余裕が彼女の動きを止めている最大の攻撃。


流れは良い。彼女に長く考える時間を与えては駄目だ。

冷静さを取り戻す早さは頬を見れば分かる。


そう思い、口を開けた瞬間…。


ザッ…。


「…ッ。」


前から聞こえていた足音。兵の集団がいつの間にか到着していた。

思わず言葉に詰まる。

いや、詰まった理由は数十名もの兵が到着しただけではない。

その集団の先頭に立つ彼女にあった。


「スネーク。終わった?」


一難去ってもいないのにまた一難。

新たな来訪者が俺等の前に立ちはだかった。

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