二十六話 ~砂漠の国 オアシス 狼煙~
26.
砂の騎士団。
オアシスが誇る最強の部隊である。兵数は百名前後。
この騎士団の強みは皆が魔法剣士である事にある。
そしてその隊長を務めるのがウィリアム・ヨルガ。
戦術。剣術。魔術。どれをとっても国、一番の実力者だった。そう。彼がココに来るまでは…。
夜の街は静かだった。今朝の賑わいはなく、開いている店もない。家には灯りがチラホラ
見える。まだ、国民はこの国を捨てずにいるのだ。いや、逃げる場所がないだけかもしれない。
「三人共、作戦は大丈夫?」
王宮に向かう道中。隣に歩く三人に最後の確認を取る。
「おっけぇー。」
「あぁ。問題ない。」
「けっ、作戦って言うほどのもんでもないだろ。」
言葉は違えど、大丈夫だという事は分かった。
王宮までもう間もなく。今や俺達は変身魔法も解いている。魔力消費を割く為だ。
魔族の魔力は体内で生成されている。それは例えるなら血液のようなもの。
早い話。魔力を多く出し過ぎると死ぬまであるのだ。
「あー、着く前に一つ聞いてもいいか?」
珍しく真剣な声音でカルマが俺に言う。
「何でお前も来るんだ?」
「それは伝えたと思う…」
と言ったところで言葉を止める。夜になるまでの間、散々、話し合った。
俺達の関係。ここまでの経路。今日の作戦。大方、話した。
戦闘能力。魔力も無い俺が今日、赴く理由も勿論、伝えた。
今更、話すことなんてないだろう。
だが、カルマが言う真意はそういう事ではなのだ。
「俺も仲間だからだよ。」
俺はよそ者だ。魔族でもない。それにコレは戦いだ。失敗したら当然、死ぬ。
それでも俺が危険を冒してでも戦場に身を投じる理由はただ一つ。
「そうか。」
カルマはそれだけ言うとそれ以上は何も聞いてこなかった。
それは残り三人も同様。俺達は誰も喋る事なく、王宮までの道を歩いた。
ザッ。
昨日ぶりの門の前。夜と昼とでは見える景色も全く違う。
門前には門番が二人いたが今は眠ってもらっている。
「モルガナ様。ナイスゥー。」
「はぁ…はぁ。まぁな。」
勿論、二人の門番を眠らせたのはモルガナちゃんの睡眠魔法だ。
「…おかしい」
「…何がじゃ?」
俺の呟きにモルガナちゃんが反応してくれた。
「街中があんなに騒いでいたのに門番が二人なんて。幾ら何でも警備がザル過ぎる。
…というか。この門番…!?」
改めて見て気付く。今、眠らせた二人の門番。その二人は…
「魔族じゃと…?」
見た時は確かに人間だった。
「けっ…。変身魔法か。」
俺達が動揺したのを待っていたかの如く。空間が歪み、聞き覚えのある声が響く。
「あー。絶望したところを討って出る算段だったが。上手い事、いかねぇもんだなぁ。」
何も無い空間から昨日、会話を交わした男。名前はヨルガだったか…?
の姿が現れる。
今日は当然ながら酒も入っておらず、鎧を着用。剣を二刀。腰に下げている。
「同族殺しを私等にさせるつもりだったのか?」
モルガナちゃんの隠し切れない怒り。その目がヨルガに向く。
「良い趣味してんなぁ。」
「……」
カルマもロデーも同様。その怒りが言わずとも見て取れた。
「はは…。そんな怒んなよ。俺だって仕事で仕方なくやったんだ。
でも、いいじゃねぇか。どのみち、この二人は売られる身だったんだ。
あんた等に殺された方が幸せだ…」
「ドラゴンの息」
ドォンッッ!
ヨルガが言葉を締める前に爆炎が上がる。
「うるせぇなぁ。御託はいいからさっさとやろうぜ。」
口から火が零れている。ヨルガに炎を浴びせたのは言うまでもなく
その人物。カルマだ。ドラゴンとのハーフというのは嘘ではないらしい。
「ったく。気が早い奴だな。自己紹介くらいさせろよ。」
煙の中、変わらぬ声が耳に届く。流石に国が誇る最強の男。そう簡単には倒されてはくれない。
ザザッ。
!?
「っけ。ぞろぞろと。」
空間の歪みが多数。その中から同じ鎧の者が中から出てきた。
「んじゃ、まぁ。せっかく来てくれて悪いんだが。死んでくれや。」
煙が晴れ、その姿が露わになる。ヨルガの手には二刀の剣が抜刀されている。
刀身が光を帯びている事からその剣がただの剣でない事は明白。
カルマのブレスも剣で防いだのだろう。
「…死なせませんよ。誰も。」
俺はヨルガにそう言い。戦闘の狼煙を上げた。




