一話 ~孤独の魔王~
誰か良いのど飴、紹介してくれます?
咳が止まらない…。
そんなこんなの一話です!
01.
ぎゅるるぅぅ…
思えば、コンビニに行く途中だった。腹も減ってるし。上着すら羽織っていないので
少し肌寒い。
というかよく見ると、周囲が物凄く荒れている。支柱は折れているし、窓ガラスは割れている。
床も焦げ跡やらタイルの剥がれが目立つ。
まるで激しい戦闘後のような…。
まぁ、それはそうと。
「あの。帰して頂けます?」
幼女といえど、初対面の方には敬語で接する。俺の染みついた人への接し方だ。
威圧的に接するより、よっぽど効果的だ。今後の展開も良好になりやすいし。
「は?帰す訳なかろう。」
うん。これだから子供は嫌い。
ならば、ココからは俺の得意とする交渉である。
「モルガナちゃんでしたっけ?悪いけど、幾つか質問してもいいですか?」
「質問?まぁ、良い。許可してやる。」
「ありがとうございます。」
態度の悪い相手でも温厚な態度で臨むべし。接客の基本である。
「では、まず。モルガナちゃんは何故。私を召喚したのですか?」
状況からして転移系の召喚術をされたのは把握していた。その手の情報は元の世界。
アニメやら漫画が好きなクライアントがいた為、勉強はしていた。まさかこんな所で
役に立つとは…。
「別に主を召喚したかった訳ではない。強い奴なら誰でも良かった。
主が召喚されたのは偶々だ。図に乗るな、阿呆。」
いちいち。鼻につく言い方が固めた笑顔を崩しそうになる。
「はは…。そうでしたか。では、何故。強い奴を召喚したかったのですか?」
「…ッ。」
ん?
幼女の表情が一瞬、曇る。訊いてはならない問いだったか?
「…勇者共に復讐したいんじゃ。父を殺したアイツ等を私は絶対、赦さない。」
憎しみと怒りが感じ取れる静かな声音。段々と声量が上がり。感情が乗っかる。
「…いや、勇者共だけじゃない。逃げた幹部共。魔界の民。私を置いて逃げた奴等。全員!
殺してやるッ!」
涙を流す幼女の姿は実に感慨深いものである。
「…じゃが私にはそれだけの力がない。魔法は中級魔法までしかまだ使えぬし、腕力もない。
能力もまだ発現してないし。私、一人では魔獣一匹も倒せぬのじゃ。」
…なるほど。大体は理解できた。だが、コレは少し難しくなった。
いや、当初の目的である。相手の目的と自分のスキルが見合ってない。
だから貴女の役には立てません。帰して下さい。という流れに持っていく
作戦は上々に運べるとは思う。
だが、ココで本当に帰っていいのか?
復讐に囚われる年端もいかぬ幼女をまた一人残して。
!?
いつの間にか拳を握っている自分に気づく。
幼女の思考が何となく理解からだ。
世界の事情は分からない。人類と魔族の歴史や。前魔王が殺された経緯も。
国の内情も。あれやこれと。全部まだ分からない。
けど、この幼女は誰かに助けて欲しくて信号を投げ掛けたのではなかろうか?
「…最後に一ついいかな?」
「…ぐすっ。なんじゃ?」
涙を拭い、それでも毅然とした態度を崩さない幼女の姿は今ではカッコいいと
思った。
「召喚魔法は中級魔法なんですか?」
「違うに決まってるだろ。お父様の書物を漁って何回も練習して扱えた。
超上級魔法の一つじゃ。」
…やはりそうか。
幼女の解答を聞いて、どこか喜んでいる自分がいる。
だからだろうか。自分でも驚くくらい、自然と手が出た。
「俺と一緒にこの国を建て直さないかい?」
「へ…?」
これまでとは打って変わって。可愛らしい声と表情が返ってくる。
「国を建て直す?何を言っておる!私は奴等に凄惨なき裁きをッ!皆殺しにしたいのじゃ!
こんな国なんか…」
最初の勢いは消え、弱弱しい声へと変わる。
そう。目的こそ裏切られた仲間。親への仇。ソレ等への『復讐』だったかもしれない。
けど、本質はそうじゃないと思った。彼女は助けを求めたのだ。
自身で強い魔法を覚え、自身で復讐するという手もあった筈なのに。
先に召喚魔法を覚え、誰かを呼んだ。
本当の目的はただの『復讐』なんかではなく。
ただ、寂しかっただけなのだ。
親を殺され、仲間も消え、独りで長い間、暮らしてきた彼女は 孤独 だった。
それでもこの地を離れなかったのは意地でもなんでもないだろう。
「…魔界は私の先祖が代々が創った国なのじゃ。それなのに私は…。私のせいで…」
幼女は膝を崩し、その場で年相応のギャン泣きを響かせる。
「わぁぁん。ごめんなさい。お父様ぁぁ!私が弱いから!私に何もないから!
皆、逃げてった!勇者共を倒せない!魔界をダメにしてごめんなさいぃぃッー!」
ずっと一人で抱えてきたのだ。小さな体で。この子だけは逃げなかった。
俺に力はない。魔法も使えないし、能力もない。ただ、俺には誇れる
モノがある。 元の世界で幾店舗の店を救ってきた。 実績だ。
コレも同じだ。この誰もいなくなった魔界に人を戻す。そして俺がモルガナを
立派な魔王として育成させる。
理屈やメリットの話じゃない。
子供が泣いて大人に頼ってきた。動く理由はコレだけで十分だろう。
「紹介が遅れたね。俺は鴨田商。店舗コンサルタントをしてる。
絶対に君を裏切らない。一緒にこの国をよくしていこう。」
「店舗コンサル・・?」
「あぁ。この国に人を戻して、国を創り直すんだ。俺はその手助けを君の…。そうだな
右腕となって働く事を誓うよ。」
「右腕?誓う…? …!?」
何かを考えた後、急に赤面する幼女。
何か変な事、言ったか?
「阿呆ッ!従僕の分際でいきなり求婚など血迷ったか!」
「は?求婚?球根…?」
「…だが、まぁ。この国をどうにかしてくれるなら考えてやらんでもない。
主の頑張り次第ではその…妻になってやらんでもない…ぞ。」
ぼそぼそと歯切れの悪い台詞であったが聞き取れはした。
んー。子供の言うことだし。適当にあしらっておくか。
小学生の子供が大きくなったら先生のお嫁さんになる!って言う感覚だろうし。
ココは大人の対応をしておくにこしたことはない。
「あぁ。頑張るよ。だから、よろしくね。モルガナちゃん。」
「ひゃっ!? 急に頭を撫でるな!」
ぽかぽかと殴られるも全然、痛くない。
んー。普段、子供と関わる機会がなかったけど子供ってこんな感じなのか?
何はともあれ、この可愛らしい魔王様とは良いスタートを切れたのではなかろうか…?
うん。きっとそう。大丈夫な筈! …大丈夫だよね?
次回、魔王様と魔界デート!?




