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レベル1の魔王様  作者: 猫屋敷 魂
第1章 魔族探索編

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十七話 ~魔獣の森⑥~

                    17.


数十年前。勇者率いる人間が魔界に攻めてくるとの情報が入った。

魔王はコレに迅速な対応をした。先ず各地に散らばる魔族を集め、

迎撃準備を完璧にした。それと同様。七人の幹部を招集。


が、その声に応えたのは一人もいなかった…。



…パチッ。パチッ。


すっかり静まり返った、場には火の粉が爆ぜる音が鳴り響く。

周囲はすっかり陽も落ち、焚火の火は妖艶に揺らめいていた。


「裏切り者って…。具体的には何をどう裏切ったんだ?」


「ふぅ…ふぅ…」


モルガナちゃんに問い掛けてみたが怒りの矛先がロデーから移らない。

俺の方には見向きもせず、睨む姿は正に親の仇を見るかのようだった。


「ロデーさん。応えてくれないか?」


しばらく、モルガナちゃんとの会話は不可能だろう。


「……言葉の通りだよぉ。私は勇者達が魔界に攻めこんでいた事を知っておきながら

国を助けに行かなかった。国を裏切ったんだぁ…。」


「……」


人は何かを隠す時、視線を合わせない。

それに幾数人と関わってきた俺だから分かる事もある。

経験則だが、今の声音にこの態度。確実にロデーは何かを隠している。

だが、ド直球に訊いて。上手く答えてくれるとは考え難い。


「助けに行かなかったって事は本当は行けたって事?」


少し、意地悪なやり口だという自覚はあった。

この問い。黙っていようと、応えてくれようと答えは知れる。

『沈黙は肯定』なんて誰が言ったのやら。


「…多分…。」


短い沈黙の後。ロデーは伏し目に短く答えた。


「そっか…。」


俺も短く言葉を口にする。  その後。一拍、空け


「で、本当は?」


「…ッ!?」


油断させての本題。コレには流石のロデーも隠し切れなかった。

驚いた表情が顔に浮かんでいる。


「ほ、本当だよ!私は裏切ったんだ!国も。魔王様もモルガナちゃんも!」


言葉に信憑性は無く。慌てる姿が逆に怪しさを目立たせる。

それに関しては本人も思うところがあったのだろう。何度か言い訳を言った後。

ようやく白状してくれた。


「…はぁ。うん。本当は助けに行けなかった。戦いが終わるまで

ずっと、隔離されてたんだぁ…。」


「隔離?」


ロデー程の実力者を数日間。閉じ込めておくなんて出来るのか?


「禁術の一つに命を糧にして、別空間に対象者を閉じ込める魔法があるんだよぉ。

私等はその魔法にまんまと掛かったのぉ。魔法が解けた時にはもう…」


嘘は言ってない。目こそ伏せてはいるが、コレは顔を合わせれない。

合わしたくないという心理的なモノだ。言った言葉は全て本当だ。


「嘘じゃッ!そんな出鱈目で私を宥めようとしても無駄じゃッ!お前等はお父様に

助けて貰っておきながら見殺しにした、裏切者じゃッ!」


モルガナちゃんにとってロデーの言葉が本物だとか。偽りだとか関係ない。

どんな言い訳。言葉を言おうと。親が死んだ事実は変わらない。国が崩壊した結果は

変わらない。

怒りも悲しみも。苦しみも誰かにぶつけた方が楽なのだ。

今更、ソレが誰のせいでもなかった。信頼していた仲間は裏切ってなどなかったなど

知ったとして。ソレがなんだという話だ。


「モルガナちゃん。落ち着いて。」


俺は怒りに混乱するモルガナちゃんを宥め、ロデーに顔を戻した。

まだ聞きたい事はある。


「ロデーさんは何でこの森にいたんだ?」


一番の疑問はソコだ。魔族とはいえ魔獣のこんなところに居続けるのは

あり得ない。居るとしても何か理由がある筈だ。


「……。」


ロデーはバツの悪そうな表情を見せた後、長い溜息を吐き出した。


「嘘は見抜かれそうだから、正直に言うよぉ。」


ロデーはようやく顔を向けた。視線がやっと合う。


「君が思ってる通り。私は、魔界に帰ろうとしたんだ。

私は転移魔法とか移動系の魔法を習得してなかったから歩くしかなかった。」


ぽつり。ぽつりと語る言葉に生気はない。ソレはそうだ。モルガナちゃんを前に

こんな言い訳じみた台詞、言いたくはないだろう。


「道のりは長かったけど、ようやく魔界に辿り着いた。

…けどぉ。」


ロデーはそこで言葉を止め、モルガナちゃんに顔を向ける。


「今の魔界を見て絶望した。かつての街はなく。民もいない。

何も出来なかった私にあの魔界ばしょは残酷だった。正直な話、

逃げたんだぁ…。でも、逃げる度胸もないから魔獣のココにいた。」


全てを吐き出したロデーは上空に目を向け。目を閉じた。

何秒。何十秒かの時間がとても長く感じた。

一筋の涙が彼女の頬を伝う。


「モルガナ様。ごめんね。」


「ッ…!」


本心の言葉程、刺さるモノはない。モルガナちゃんにもソレはちゃんと伝わっていた。

だから、言葉に詰まったのだ。


「な、なんじゃ。今更!赦す訳ないだろう!お前等が助けに来ていたらお父様もお母様も…」


分かっていた。流石のモルガナちゃんも誰も悪くないという事に。強いて、悪者を上げるならば

それは歴史だ。人間と魔族が争っているからこういう結果になったのだ。

ならば変えよう。この世界を。もうこんな子が生まれないように。


 魔界を復興させ、世界を変えるのだ。


とはいえ、ソレはまだ未来さきの話。握った拳はまだ早いと冷静に、解く。

今は…


「あー、とりあえず。モルガナちゃん。食べよ。」


俺はすっかり冷めた肉をモルガナちゃんに渡した。


「……」


少し考えた後、モルガナちゃんは静かに肉を受け取った。


「…不味い。固いし、冷めておる。味も淡泊じゃ…。…ッ」


文句の声は段々と小さく。大きな涙が地面に落ちる。


「うわぁぁーーーん。あーーーー。なんでじゃぁーーー。どうしいてじゃぁーー。」


感情を抑えられなくなったモルガナちゃんは年相応に泣き叫んだ。

この感情をどこにぶつけていいのかが分からない。

だから、彼女はただ泣く事しかできなかった。


俺はそっと、彼女を抱きしめた。この感情を分け与えていいよと

伝えるよう。彼女が泣き止むまでずっと…。



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