九話 ~王都~
09.
魔界という国がかつてあった。
魔王という人類悪が治める国だ。子供は皆、魔族は悪だと教わり。将来は魔王を討つ
存在になれと大人から叩き込まれる。そうして人類は数千年もの間、魔族と争っていた。
その歴史を終わらせたのが英雄、アスフォルト・ロイである…
『魔族の終わり』より一部抜粋。
首都 セルシニアがこうも豊かな国になったのは十年前のことである。
それまでのこの国は国民が食べ物を奪い合う…。そんな光景が日常茶飯事の酷い国だった。
「へい。らっしゃいっ!らっしゃい!今日は新鮮な魚が手に入ったよ!見ててッてなー。」
「薬草はいらんかね~。流行り病。風邪に体の痛み。何でも治せる。万能薬があるのは
ココだけ!寄っていきな、見てらっしゃい!」
ガヤガヤ。
「ん~。今日も平和。空も快晴だし。良い事ありそうッ!」
白髪の長い髪を揺らし、街を闊歩する女性の名はラヴィット・イヤー。
小柄で華奢な体には指輪やらネックレスなんかが着けられており、太陽の光が当たる度に
輝きを放つ。
かつて勇者と呼ばれ最前線で魔王と闘っていた一人である。
「ラヴィット。その髪は毎日、編んでいるの?面倒じゃないの?」
隣に歩くショートヘアに切られた青髪が目立つ青年の名はガーネット・キング。
長身で筋肉質の体が特徴的な彼だが、その性格は気弱で温厚だと知られる。
これまた勇者と呼ばれた者の一人である。
「キング。ソレ毎回言ってるよ?おしゃれに面倒は付き物でしょ?キングも
綺麗な髪してるんだから何かしたら?」
「僕はいいよ。男だし…」
「男とか関係にと思うけどなぁ…。あっ!あそこの店、寄っていい?」
「え?ちょっ…」
キングの断りもなしにイヤーは店に向かっていた。店の横に立つ旗には『オープン』
と書かれてある。
ココ最近、街は活性化しており。移住民や商人が多く物を売りにきている。
その為、こういった新しい店は珍しくなかった。
「わぁぁぁ!見てよ、キング!この首飾り超かわいくない?」
「あっ…。いや、僕にはよく分からないよ…。」
店はアクセサリー屋らしく。店には多くのアクセサリーが並んでいた。
イヤーはまるで子供のように、はしゃぎ見ては、手に取り。また、身に着けたりしている。
「これ以上、増やしてどうするのさ…。」
キングはイヤーの気持ちが分からなかった。
家にも幾つも宝石があるのは知っているし、アクセサリーなんてなくても
イヤーは十分に魅力的な女性だと思っていたからだ。
「ねぇ、キング!コレとコレどっちがいいと思う?」
傍らに立っていたキングにイヤーは、二つのイヤリングを手に問う。
一つはハートの形がデザインされたモノ。もう一つはスペードの形がデザインされた
ものだった。
「あっ…いや。ハートかな…?」
正直、どっちも似合うと思ったが。イヤーのハートを見た時間がスペードよりも
長かった。聞いたのは他人に一押しして貰いたかったからで、本当はハートが
欲しいと決まっていたのだ。
「やっぱ、そうだよね!ありがとう、キング!買ってくるねぇー。」
満面な笑みを見るところ間違ってはいなかったらしい。
キングにはこうした他人の心を読む読唇術的なスキルがある。
勿論、本当に心を読める訳ではない。世界にはそういった能力を持つ者が
いるとは聞いたことはあるが、キングに至っては人間観察が行き過ぎた上で得た、
特技のようなものだ。
「おまたせぇ。はい。キングにもコレ上げる。付き合って貰ったお礼。」
紙袋を一つ。イヤーはキングに手渡した。
「え?」
イヤーがイヤリングとは別に何かを買っていたのは知ってはいたが。
まさかソレが自分の物だとは思っていなかった。
中を開けると青色の指輪が入っている。
「キングの髪と同じ色だよぉー。いいでしょ?」
「あっ…うん。ありがとう…。」
普段、人から何かを貰う機会が少ないキングはこした時の対処法が分からないでいた。
「うん。」
そんなキングにイヤーは優しかった。コレがこの女性が皆に好かれる要因である事も
キング含め、仲間の皆は知っていた。
「それより、何だろうねぇ?集会なんて久しぶりじゃない?」
「そうだね…。何年振りだろ?」
アクセサリー屋を出た二人はこの街、一番の大きな建物。
王が暮らす、宮殿の前で足を止めた。
「何かあったのかな?」
キングは誰に言うでもなくそう呟いた。




