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なりたいなら書くしかないですよって言われた話  作者: 由甫啓


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3

 なんだったんだろう、分からん。と思いつつも文芸部へと足を向ける。


 入ったはいいものの、家で創作活動に励むのが有意義ってもんでは? と週の頭と終わりにだけ顔を出しているだけなので殆ど幽霊部員といってもいいだろう。


 僕が何となく所属するところの我が校の文芸部は所属八人、実働二人である。おそらくどこの高校もそうだ。もしくはそうなる。


 かくいう僕も、週二顔を出す程度の半分だけ入ってるようなものなので実質一人と半分──なんか半人前みたいな感じがして駄目だな今のナシ。


 稀に参加する僕を除いて、部室を欲しいままにするのが部長の遠藤文先輩である。アヤなのかフミなのかは知らない。

 大の小説バカだ。

 野枝小道を天才作家とするなら、まごうことなき小説バカが遠藤先輩だ。


 自分でも私は小説バカなのさ、とか言っているから間違いないはずだ。

 去年の部誌こと『オール遠藤』は中々に凄いもので、掲載した全てが遠藤先輩著作なのだから驚きだ。

 なんでこんな部が存続してるのかは分からないが、存続しているおかげで僕もまた文芸部に入部できているのだ。そんな人しか居ないから小説家目指してますなんて顔で居られるわけだけど。

 さっきは恥ずかしがり屋には小説なんて書けないぜ、と言われたじろいてしまったが、ちょっと楽しみだったりする。部誌とはいえ本になるなんてちょっと嬉しい。

 今年の部誌って僕のページあるのかな? あるよな、多分。


 とにかく、どんな方法場所であれ野枝小道なる作家の鼻を明かしてやりたい。ぐうって言わせてやるのだ。なぜなら言われっぱなしは癪だから。


 その為の方策ってやつを部長に、少なくとも作家ではないアマチュアとか新人とか、素人にあたる人間でも先達に違いないのだ。相談するのはおかしいことではない。立ち位置が高いやつは必然、頭が高くなるものなので変に何かを達成している奴に訊くわけにはいかない。頭が高いのは癪だからね。癪なのは嫌なのだ僕は。

 遠藤先輩は小説バカではあるが、小説バカなので問題ない。背も僕よりちょっと低いから頭も低いし。


「お疲れ様ですー」


 と、引き戸を開ける僕に「うわあああん!」なんて見栄も外聞もなく泣く先輩が突っ込んでくる。茶髪の頭が胸にぶつかって息が抜ける。痛い。でこを出してるから火力が高いのだ。


「ちょっと、先輩! 離れて!」


 頭を擦り付け──抱きつくな! でかいんだからやめてほしい、来づらくなる。ちょっと好きになりそうになるから本当やめてほしい。

 遠藤先輩は態度と胸がでかい。思春期に不用意に近づくな、小説に出すぞ。


「うわ、きたねっ! 鼻水擦り付けないでくださいよ!」

「つめてー、泣いてんのにつめてーうける」


 けらけら笑いだす先輩のテンションの乱高下についていけない。

 鼻水のおかげで心が無になったからよし。何も良くない汚い。


「いやなーさっき校長に呼ばれて言われたわけよ、文芸部は今年をもって廃部だっ! なんてよー。もちろん、すかさず私は言ってやったさ、ここにでっかい優勝旗置きたくはありませんかってさー。それを追い出しやがって校長のやつ、あんまりだろーが!」


 なんのネタか分からないけど、文芸部で優勝旗ってことはないと思う。遠藤先輩が急によく分からないことを言う時は何かのサブカル的発言に決まっているのだ。


「理由はなんです?」


 部室の程中にある四人掛けのテーブルに鞄を置きながらそう訊ねれば、よくぞ訊いたとばかりに先輩は口を開く。


「活動内容に対する部費や部員数がどーとか。ついでに言うなら今年の新入生で入部者はお前だけってのがよくないってさ」

「仕方ないですね」

「仕方なくねーって! あれは期待だね。期待大だね。我々文芸部に実績を求めているのさ!」


 そうかな、違うんじゃない? 去年出した先輩オンリー部誌のせいではないかと睨むけど。なんか部活動というより私的な活動って感じするし。


 青ダヌキに抱きつく射撃上手い少年よろしく助けを請うつもりだったんだけど。一先ず考える。

 実績ねえ。文芸部の?

 無くても困らない……は嘘か。先輩方の置いていった古い本とかまだ読んでない。コブナント好きなんだよね、救いがあるようなないようなあの感じ非常にいい。


「無いよりは残ってて欲しいですけどね。僕も少し本とか置いちゃってますし」

「そこで考えた! 我が部から作家を出そう! ばんばん排出しようじゃないか!」


 名案とばかりに指を突き出す遠藤先輩に不安を覚えずにはいられない。

 なに言ってんだこの人。いやまあ、渡りに船? そう言って成れるもんならなってるという問題があるけど。


「そこでだ栗本よ! 私を除き最多の出席率を誇る君の双肩に全てが懸かっているといっても過言ではないぞ!」


 僕とあなたしか来ませんからね。

 でも幽霊部員の誰かが二次選考残ったりしたら僕も来なくなるかもしれん。考えただけでお腹痛い。


「そうは言いますけど、そんなの無茶ってもんじゃ」

「無理とは言わんだろ」

「……そりゃ無理だなんて言いたくないですからね」

「とりあえず、活動してますよと折角アピるのなら盛大に! と言いたいが難しいのも事実なのでエスのエフのマガジンみたいなとこに短編載せるとか目指そうってわけよ!」

「部員増やすとか幽霊部員の皆さんを、引きずり出すっていうのが手っ取り早いと思いますけど」

「そんなの普通でつまらんとわたしゃー思うわけよ。それにだ、去ったやつらを呼び戻す為に頭悩ますぐらいなら小説書けって思うし、やる気ある奴は勝手に書く」

「なら、ここにいる僕達は?」

「やる気のある馬鹿だろ。小説家になり沢山の物語を創作する……出来なきゃ死ぬ、そんな思いを胸に抱いたものだけが部室に入れるんだぞ」


 知らんかった。この人、なれなかったら死ぬのか?

 僕はさて、どうだろうか。死んでもなりたいか? 書く、生きる為に書く。生きる方法として仕事にしたい。死にたくないから書いたりして。ミザリーかな?

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