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なりたいなら書くしかないですよって言われた話  作者: 田甫 啓
起承転結の「しょー」だな!

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「私のことみっちゃんて呼んでいいのはしょーちゃんだけなんだけど」

「ごめんなさい」

 取り敢えず謝ってみたけど、ふんと鼻を鳴らされる。僕の言葉は届かないのか。


 野枝小道と話に花を咲かせるみっちゃん達の後を取り敢えずついていく。

 女子の後を尾けて歩く怪しいやつに見えたりしてない? やだなぁとちょっと距離を置く。

 ま、行き先が同じである以上仕方がないんですけど。


 仕方がないついでに歩くたびに揺れる野枝小道の髪を眺める。

 テカってる。違う、艶がある。言い方一つで殺されそうだから気をつけないと。

 えー、きゅーてぃくる? そう、きゅーてぃくるがあるね。きゅーてぃくる、きゅーてぃくる。


「あっ! 思い出した! こいつあれだ、寝てるしょーちゃんをじっと見てた人!」

 スカートをはためかせ振り向くみっちゃんに、僕もああ、と合点がいく。

 こいつあれだ、寝てる野枝小道の髪の間から顔出してた、なんか字面酷いな……。


「あなた、寝てる女子高生をじろじろ見るんですか?」

「僕はそんなことしないよ、しょーちゃん」

「はい?」

 なんの感情も伺わせない野枝小道こと、しょーちゃんに思わず震える。


 一応気を使ってペンネームで呼ばないようにしただけなのに酷いぜ。

「高ね……じゃない。高嶺さんと呼んでも」

「まあいいでしょう」


 僕達のやり取りを見て、みっちゃんが眉根を寄せる。

「え、なに。二人で登校キメちゃうくせにそこからなの?」

 キメちゃうって言うことある?

 僕は同学年の女子言葉──女子の使う言葉のこと──を何も知らない。

 もし著作に女子高生を出そうとしたら何も喋らせることが出来ないかもしれない……。


「この何やら阿呆なことを考えていそうなのは栗本という隣のクラスの男子です。それ以上の関係ではないですね」

「そうなん?」

「ええ、そうなんですよみっちゃん。まあ将来の部活動仲間かもしれませんが」

「えー、私には時間がないから遊べないって私には言うのに!」

「書く時間はいつだって取りたいとは考えてますけど、こないだ遊んだばかりじゃないですか」


 えっ作家業もしかして隠してないんか!? えー、言っていいやつなのか? なんだよしょーちゃん、言っといてよ。


「また阿呆なことを考えてそうなので言いますが、言いふらすようなことではないので言ってないだけです。あなたは脇が甘そうなので『あいつ作家なんだって』など口を滑らさないよう気をつけるように」


 いいけどね。僕も作家デビューしたとして口にはしないだろうし。

 僕だったら自著をさり気なく机に置いたりはする。


 それを例えば仁科くんが「その本おもしろいの?」なんて訊いてくれば「あーこれ? まあ大したことじゃないんだけど僕が書いたんだよね」と口を開くことがあるかもしれないか。

 サインの練習とかしてもいいかも。


「しょーちゃん、それ私と二人だけの秘密じゃなかったの!?」

「えっ。あー、そうですね。私もそのつもりだったんですが、栗本さんは目敏いというか……」


 僕は何も悪くないのでは?

 目配せする野枝小道に僕は首を傾げる。

 何を求めてるのかさっぱり分からんし。二人だけの秘密が何かは置いといて、僕に限らず遠藤先輩だって知って──先輩の言ってた威嚇してきた奴ってこいつか。

 みっちゃんみたいなのが複数いたら敵わないからきっとそうだろう。


 恐る恐るとみっちゃんが僕を睨み、ついで野枝小道の腕を掴む。

「もしかして……脅されてるの?」

「だーれが脅すか!」


 びっくりしたわ。飛躍が過ぎるぞ! そんなことするように見えるか、僕が!

 僕は小中となんか『栗本っておもろいよな!』みたいなふわっと評価を受ける男だぞ。脅したりしないぞ!

 だから胡乱な目で見るんじゃないみっちゃん!


「そうですよ。この人にそういうことが出来そうに見えますか?」


 野枝小道が問いかけると、ふるふると首を振るみっちゃん。

 ……なんか、下に見られてる感じがする。

 いや、しないけどね。


「噂だとか。そういうのは面倒でしょう。迷惑千万です」

「しょーこちゃんがそういうなら僕は言わないよ」


「しょーこ? 私の名前を知ってるんですね。他クラスの人の名前まで覚えているんですか」

「……んにゃ、たまたまね」


 野枝小道。

 またの名を、しょーちゃん。

 本名、高嶺翔子。

 一方的ってことはなかったと思うんだけど忘れられてるのは寂しいぜ。


「うーん? 私、結構人を覚えるのは得意だと思うのですが」

 じろじろと不躾に野枝小道は僕を見る。

 みっちゃんは野枝小道を後ろから抱きしめつつ僕を無感情に見つめる。こえーよ。


「見覚えがあるような、はて」

「しょーちゃん、学校急がないと」

「それもそうですね。さ、行きますよ」


 すたすた歩き出す野枝小道とみっちゃんをまた追いかけるように歩き出す。

 その後ろ姿に僕はため息混じりにぼそりとこぼす。


「いやー、覚えてないもんだよな」

 お前は僕の初めての読者なんだぞ。

 初めてのファンで、だからその感想が不安で楽しみで、それを初恋だと思ったんだろうなーなんてさ。

 言わんけど。

 作家でもない今の僕と繋ぎ合わされると、あんまりにも格好つかないし。


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