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なりたいなら書くしかないですよって言われた話  作者: 由甫啓
起承転結の「しょー」だな!

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 なんか最近、叱咤激励されるな。

 いや、いいんだけど。いや、良くはない。だってそれ、


「もしかしてなんだけど、僕って頼りなさそう?」

「あん? まーよく知らねえけど、吹けば飛びそうだよな。ひょろいし」

「違う違う。容姿じゃなくて、一人の作家志望として」


 全くもって勘弁してほしい。見た目で評価するなんてあんまり良くないぞ。


「勝手ながら読んだ部分に加えて、俺の審美眼をもって判断するとだ。ま、頼りようはないだろ。つーか、一作家としての頼り甲斐ってなんだよ。ジャンルに展開か?」

 あー、言いよりましたよこの野郎は。

 とはいえまあ、


「信頼ってやつはあれだったね、培うものだしね。見知らない金髪頭に訊くようなことじゃなかったわ」

「そうだぞ。お前はなんていうか、小説投稿サイトに上げるのは完結してからにしろよ」

「何故……?」

 唐突になんだっていうんだ、金髪頭め。


「そうしないと途中で書くの辞めそうな顔してるからな。信じるほど頼れねえ」


 痛ってえ。

 少し書き溜めたら投稿したろ! と思った高校入学前を思い出してしまう。

 途中まで書き上げて、続かなかったから本当に上げなくて良かった。上げていたら、まずい……書かなきゃと自分でも面白いと思ってない話を無理に拵えていたことだろう。

 なんとか続けよう続けようと、文字数ばかり嵩むよく分からない小説を生み出してしまうとこだった。

 自分なら絶対やらかすという信頼が僕にはある。悲しいね。


 短編はまあ、上げてるんですけど。続かないとかがないからね。

 投稿サイトに小説上げると、身は引き締まるから続けた方がいい気はする。そう、気はするだ。最近上げれてない。長編書こうと息巻いてるから。

 でも短編ってスナック感覚っていうか、適当にほいっと上げれるからいいと思う。気軽に上げて気軽にPV付いてるのみて、まあまあこんなもんですかねなんてほんのり自己肯定感を高められるから全員やったほうがいいと思う。今度、遠藤先輩に勧めてみよう。


「おっ図星か?」

「咄嗟に回避したので僕は未だにエタったことはないよ」

 嘘ではない。上げてないからエタるわけがないのだ。

「ふうん。ならいいか」


 金髪頭は興味を無くしたようにカタカタとキーボードを叩き出す。

 なんなんだと思いつつ、僕もまたキーボードをカタカタする。


「所謂よー、しょーせつ投稿サイトってのは幾らでもあるだろ」

「まーそーですね」


 金髪頭の言葉に生返事を返す。

 んー、このくだり、もっと後の方がいいかな。僕は野枝小道じゃないからちゃんとプロットを描く人間だ。

 ちゃんと、と言ったがあまりちゃんと書いてない。最初から最後まで、これだけは変わらないと決めた道を選んだだけだ。当たり前にスカスカの骨だけのプロットをベースに肉付けしていて、時折思いついたことを連想ゲームのようにメモ書きしている。

 なんとなくでやってみた割には、そこまで迷わず書けてる。調子が良い。


 認めたくないけど人と書くのは刺激があるのかもしれない。同席相手がちゃんと本気っぽいからかもしれない。

 遠藤先輩と同じ空間で書いたことないから知らなかった。なにせ幽霊部員だし。置いてある小説を読むだけだったのは惜しかったかもしれない。


「そこで行われてる公募とか、上位の作品がすぐに確認できるのって凄えよなー」


 あっ、全然聞いてなかった。なんの話?


「流行りとか企業様の求めてることが一目で分かるんだから確認はし得だぞー。まあ、俺はガン無視だけど」

「あー。でも、僕ってほら持ち込みで勝ちを掴んだりする予定だから」

「お前、いつの時代の人間だ……?」


 いやでも、図書館で借りた小説の作法的な本とかにはそういう風に書いてあったから間違いないはずだ。作家ではない男の意見と作家の残した技法本とでは後者に分があるのではないか。


「なんか、こーこーせーよー。お前失礼なこと考えてねえか」

「全然思ってないですけど」


 勘の良い金髪頭だな……。

 あれかな、作家力が増せば増すほど察する力が強くなったりするんじゃないだろうか。


「お前のそれってどこ向けに書いてるんだ?」

「知り合いの鼻を明かす用かな」

「おーいいね青春かあ?」


 違うんですけども。

 変なこと言いやがるぜ。やれやれ、と窓に眼を向ける。


「あれ、暗くない?」

「暗いな。まあもう五時、いや六時か?」


 あかん。柚子姉に連絡してない。やっべえ、怒られる。我が家の人間は皆んな飯を残すことに対して異様にキレるから帰らんと。


「スマホ、スマホってあれか。家だわ」

「お前、携帯電話ってのは携帯するから携帯なんだぜ。知ってたか」

 うるせーだいがくせーだぜ!


「金髪頭のだいがくせー!」

「なんだよ、こーこーせー」

「僕はこれで!」


 即座にショートカットで保存して、ノーパソをぱたりと閉じる。カバンに仕舞って席を立つ。

 三歩歩いたところで、肩を掴まれる。


「へいへい、金置いてけよ」

「か、カツアゲ……」


 頭にすかさずチョップを叩き込まれる。

 いやまあ、払いますけど。ほら、ワンチャンね?

 なんか、また会う気がするんだよなこいつ。



「しっかりズレなく払わされたな……食事の席では年上が払うルール的なのがあるって聞いたんだけど嘘だったか」


 財布を仕舞いながらファミレスを出ると、車道の向こうを歩く最近よく見る姿が目に入る。

 妙に早足で、俯きがちなその姿は紛れもなく野枝小道だ。


 なんか体育会系の人間だったら大声を上げて呼び止めたりするんだろうな。知らんけど。

 そもとして、人違いだった時に耐えられるほどのハートはない。

 それに見掛けたから声を掛けてなにを話すのかっていう。


『やあ、野枝せんせー!』

『あら、こんなとこで油を売って。執筆はどうしたんですか? 出歩く暇があれば机に齧り付いてでも創作に向き合う事です。それに』


 ……やめておこう。追いかけたら追いかけたで、ストーカー扱いされても敵わないし……。


 って、人のこと気にしてる場合じゃない。僕もさっさと帰らないとまずい!

 柚子姉の怒り顔が頭に浮かぶぜ!


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