50歳の君に
昭和35年、それがお前がこの世に生を受けた年だ。
世間ではダッコちゃんが大ブーム。
彼はダッコちゃんとは呼ばれているものの、実際は自分の力でしがみつく事で、ちゃんと世の中に足跡を残し、今も人々の心に生きている。
決してダッコちゃんなんかじゃないんだ!
それに引き換え、お前は今まで何をやって来たんだ? お前こそ甘えん坊のダッコちゃんだろう? 自分の力で何か残せてるか? 世間に対し、何か胸を張れる事があるのか? 中学で、いわゆる落ちこぼれとなり、やっと入った高校は中退。
その後は、まるで尾崎豊の歌の歌詞のごとく、世の中に逆らう様に生きてきた、それが格好いいと思ってた! 社会に出てからも、仕事を何度も代わり、金が入ると酒とギャンブル。
そんなお前も、今年の6月で50才になるんだぞ。今のままでいいのか?
“えっ。 今は人並みに頑張ってるだって?”
確かに今のお前は、フィリピン人のかみさんと、二人の子供に囲まれて、良い親父の様に見える。 でもそれはお前の思い違いだ。
かみさんのやさしさと、子供たちの笑顔が、お前に良い親父を演じさせているだけなんだ!
実際のお前は何一つ変わっちゃいない。 それはお前が一番よくわかっているはずだ。
かみさんは生まれ育った国を離れ、お前のもとに来た! 右も左もわからないこの日本で、お前だけが頼りなんだぞ。
50才を迎えるこの期に、お前はお前自身の根本的に駄目な部分を、じっくりと見つめ直さなければいけないんだ。 そして、良い親父を演じるのじゃなく、お前が新しく生まれ変わり、素のままでいても、家族が心から笑えるようにしなければ!
いいか、50才になる日、それは誕生日であるとともに、過去の自分の命日だと思え。
お前が、本当の意味のダッコちゃんにならないためにな!
50才の自分に。49才の自分より。