泥棒ではなく取り返しただけです
豚義母の部屋に転移侵入する。目的はお母様の形見の品。奴らはお嬢様から全てを奪いやがった。
あったあった。品のいいベルベット張りの箱に収められた見事なパリュールひと揃えは、お母様の瞳に合わせた息を飲むほど美しいプレシャスオパールで造られていた。お二人の瞳はそっくりだからお嬢様にもさぞかし似合うだろう。
侯爵ご夫妻に愛されてたんだね、お母様。佳人薄命が憎いわ。
イヤリング、首飾り、ブレスレット全部が同じ色調の青と紫メインに七色に輝く逸品である。他に二箱のパリュールがあり、これまた最高級の真珠とダイヤモンドで設えられていた。
「これぞまさに豚に真珠。返してもらうわ」
しばし見惚れてからさっさとフェイクを造る。縁日で売ってる程度の素材でね。キラキラ〜を足してやろう。
宝石箱にもお母様の物があったので同じ処理をした。
そうだ、豚さんのアクセサリーも偽物に変えて売り飛ばしてお嬢様積み立てしよう。
ドレスを確かめるとお母様のが十着あったので以下同文。サイズが違い着られもしないのに、奪ったら満足らしい。ホント最悪。
豚臭さがしそうで念入りにクリーンを掛けインベントリに入れたら向かうは子豚部屋。
子豚はお嬢様の品々を略奪していた。豚豚連呼してたら美味しい豚さんが気の毒だな。オークかゴブリンにするか。
しかしゴブ子、盗り過ぎだろ。センスが悪いからお嬢様の物とゴブ私物は一目瞭然だが、念のためお嬢様の気配を辿っている。あ、爵位の低い子からも奪ってるわコレ。可哀想に。元の持ち主にもど〜れ〜ってやっといた。
バレないようゴブ義母の宝石類を遠くの国で売り捌く。ちゃちゃっと転移。
足元を見る店主には浮気相手の容姿を細かく言い当て、奥様に言っちゃおうかなーと独り言。
ついでに貴族を騙して贋作の絵を売った件も呟くと店主涙目でちびりかける。
最初の査定額から十倍になりました。
今日はこれくらいで勘弁したるわを貴族令嬢語で言ったら本当にもう来ないで下さいと土下座された。程々にせえよ。
またつまらぬ小物をいたぶってしまった。気分イイネ!
転移も人にもかけられる鑑定もお任せあれ。ホーッホホホ、魔侍女とお呼び!
貴様は悪の才能があるな……、って聞こえた気がした。
やだーこわーい、か弱い淑女に貴様とかどちらのヤンキー霊かしら。
私は悪だから呪っちゃお。
パパには禿げてくる上に不能になりトイレがすごく近くなるように。ん? なんか反応が……呪いは通ったけど。
ゴブママは水虫になり痒くて痒くてたまらなくなるように。
ゴブ子には何を食べても太りまくるように。
全員吹き出物のオプション付けよー。
悪魔め……だって。ホホホ。
ルンルンと邸に戻るとお嬢様は熱心に読書をされていた。
「リリス!」
嬉しそうなお顔の愛らしいこと!
海外土産のスイーツと可愛らしい小物類がありましてよ! 口座作りましたよー欲しいものは言ってくださいね。
「あなたがいない間に、騎士が訪ねてきたの」
「騎士ですか?」
「ごめんなさい……。てっきりリリスだと思ってドアを開けてしまった。あなたなら自分の部屋に入るのにノックしないわよね。嬉しくてつい」
告白かしら!? なんて浮かれはしない。お嬢様虐めの性悪リリスが好きなんてただの異常性癖だ。
「名前は言ってましたか」
「アーノルドと。黒髪のかただったわ。私がここに連れ込まれたのでリリスの外出を見計らって来たって。不自由があれば言ってくれと」
『すぐにはお助けできませんが、準備が整いましたらすぐにも。申し訳ありません』
そう告げて焼き菓子を渡してきたという。ふむ、毒は大丈夫ね。黒髪があの騎士なら何よりだわ。
「リリスに見つからないように食べてって。あなたが悪く言われてムッとしちゃった。演技しないとだめなのに」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ、せいぜい悪役侍女をアピールしますから」
私の評判などどうでもいい。
食生活の改善と丁寧な手入れでお嬢様の美しさに磨きがかかりました。
あれから父親の書斎にも忍び込んだ。仮にもお嬢様の父だからゴブとは呼べない。
継承に関する書類や様々な権利書どうしよーかなーと考え、金庫を絶対開かないように封印した。お母様からお嬢様へのかなりの額の個人資産、及びお嬢様自身のそれ(帝国貴族から定期的に送られていたのと侯爵夫妻の遺贈)関係の証書。管財人は……きちんとした弁護士だ。これはインベントリに。
成人年齢までの管財人が父親でなく良かった。ただ弁護士から月々に渡される筈の予算がお嬢様に渡っていない。
話し合いに行き事と次第によっては潰す。
後回しせず直行しました。
弁護士は父親を疑わず彼の口座に入れてたという。後妻が来るまではちゃんとお嬢様に遣っていた形跡もある。
まあ猫被ってたしね。とてもお嬢様を可愛がっていた。
その分、裏切られたお嬢様は深く傷ついたんだ。
あいつ、目立たないし草に向いてね? 潜入工作員。ただ頭はそんなに回らないか。
気になることがあるしこれもタイマンで話し合いだ。
呪いで発狂状態の奴らはお嬢様にまで気が回らない。ことは順調に進んでいるが、ひとつだけ困っている。
ひとりで剣術の腕をあげるには限界があるのだ。別に極めなくていいんだけど、せっかく恵まれた能力なら伸ばしたい。
交渉に出掛けよう。




