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侍女リリス・キャメロン



 私リリス・キャメロンは昨日付けでお嬢様の侍女として雇われた。美人を鼻にかけ社交界でも有名な性格の悪さを買われたのだ。

 自称するのは恥ずかしいが美人です。ただしめっちゃ女王様的、キッツい感じ。

 赤髪に緑眼、まさに嫉妬の怪物グリーンアイドモンスター!

 虐げられ尚も美しいお嬢様に、私のがキレイ! とキレ散らかす有様。



 残念でしたーセリフが既に負けフラグでーす! と自分を煽る私。銀髪にアメジストの瞳はエルフもかくやと思わせる麗しさ。

 グリーンアイの怪物が足下にも及ぶもんか!

 いやそれ以前に十八歳が十三歳に対抗心燃やすな!


 ……厚化粧が重い。明日からはナチュラルメイクにしよう。目元をキリッと意地悪そうに悪役風味にすりゃいーや。



 目的の厨房に到着する。折しも今はティータイムの準備中。

「ダナ、お嬢様にお茶の支度を」

「おや、何を企んでいますリリス様」

 ニヤつきながら近寄るダナはお嬢様に嫉妬してイビリを愉しむクソ女だ。

 まあリリスの同類ね。



「目の前で私がお茶をするの。マナーを教えて差し上げないとね。よく香るお茶に、セイヴォリーもお願い。これから毎日よ」



 銀貨を握らせればニチャア……としか形容できない醜い笑いが返る。金と嫌がらせが絡むと良い働きをするタイプ。似た者リリスにはすぐ分かったのよね。



 しかし殴る直前に記憶が戻り本当に良かった。空手を嗜んでいた私、一般市民に手出しして大会に出られなくなる恐怖が手を止めさせたのかも。





「こ、これ……」

 ティースタンドに美しく飾り付けられたプチフールの数々。言いつけ通りにサンドイッチもある。ローストビーフ、サーモンパテの二種ある。よしよし。

 パイまであるしカロリー凄いな。

 しかしこの量……分かってる。ダナは私を太らせたい。お嬢様を虐め私を醜くできる一石二鳥の嫌がらせ、しかもお駄賃付き。

 美人を狙い撃つためならいくらでも腕を奮える。以前の私と同じく歪んでるね。



 あっ、ちょうど廊下に足音が。 ちょうどいい。 お嬢様は物置部屋に押し込められているから防音も何もない。

 使用人に証人になってもらお。おお、駄洒落だ。



「なんですその卑しい目つき。私が作法を実演して差し上げているのですよ」


 声を張り上げながら手で急ごしらえの粗末なテーブルを指し示す。戸惑いつつ素直に座るお嬢様。


「どうですこのお茶、良い香りでしょう。あらおじょー様あ、このエクレア絶品ですわあ、う~んバニラが効いています!」


 ホーッホホと高笑いを添えるが、喋って笑って食べるとかかなり器用な人だ。


(さあどうぞ。スコーンは夜に回しましょうか。サンドイッチも、残した分には保存をかけますので)

 胃が小さくなってるよね。無理しないでねお嬢様。

(わ、分かったわ。……ありがとう。お茶なんていつぶりかしら)


 少し涙ぐむフェリシア様、尊い。


「あー美味しい! あらお嬢様はお腹が空いてらっしゃらない? 残念ですわあ」


 一人芝居を続ける私の傍ら、綺麗な所作でお茶をいただくお嬢様。

 シュールさに笑いそうになる。



 ワゴンは廊下に出せばいいのだが、ダナを褒めてもっとやる気を出させよう。

 美味しくてつい食べ過ぎたわとか言えば量は増えてくだろうからね。



 ワゴンを押していると侯爵家騎士団の皆さんに行き合った。赤青金と彩り豊かな髪色のなか、ほっとする黒髪騎士がひとり。目に優しくていいね!

 すれ違いざまに会釈すれば黒髪騎士が睨んできた。


「あなたには淑女の、いや人としての誇りもないのか。弱い存在をいたぶるなど」


 たしか物置きの近くには騎士団の備品庫があったな。足音はこの人か。


「失礼した、侍女殿。おいアーノルド──、」

 仲間の声も置き去りに踵を返す黒髪。いい人だなーかっこいいし体格は素晴らしく名前までイケてる。

 お嬢様の力になってくれるかな? 家格は? 年の差は十くらいか。仮の婿候補にしてあげんね君(何様)



 なかなか好みなイケメンに嫌われ少しだけ傷ついたが、お嬢様への愛に比べれば些細なこと。

 だが騎士にも色々いるだろう。オオカミの前に防犯ゼロ物置部屋の超絶美少女……ダメダメ!今日から私の部屋にお連れしよう!


 



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