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危ないところで覚醒した



「馬鹿にしてんの!? 気持ち悪い目で見るなっ!」

 怒声と共に振り上げられた手に、殴られる衝撃をフェリシアは覚悟した。

 だがいつまで経ってもそれはやって来ない。閉じていた目をそっと開けば、振りかざした腕をそのままに何故か呆然としたような侍女の姿があった。


「……?」

 やがて侍女は手を下ろしてフェリシアにもう一歩近づいた。

 いきなりの笑顔が恐い。整った顔立ちだが、吊り上がり気味の眼はたいそうきつい性格を感じさせる。背も高く圧がすごい。

 これから何をされるのか、フェリシアは恐怖に縮こまった。



「大変失礼を致しました。何も言わずお聞きくださいお嬢様。私があからさまに何もしなければ、おそらく解雇されます」

「えっ───」

「誰よりも私が虐げているように装います。その分、他の虐待を減らせますのでどうかご協力を」

「……」

「必ずお救いすると約束します。何卒いまは耐え抜いてくださいませ」



 まだ信じられないながらフェリシアは頷く。青みがかったストレートなプラチナブロンドの美しい少女だが、全体的に薄汚れみすぼらしい。

 全く手入れがされていないのだ。



「舞台女優を演じるつもりでいてください。より痛々しく悲しげに。奴らを満足させれば安全ですので。大丈夫、ヒロインはフェリシア様です」




 ああああ゛ヤバかったああ!!

 思い出して良かった前世記憶!!



 厨房へ向かいながら冷や汗を拭う。

 バカじゃないの私。たかが子爵令嬢がなにイキってんの。いかに冷遇されてようが侯爵令嬢! しかも次期侯爵よ!?





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