楽しみな未来
夕方になりーー
鈴香と直紀は家を出る。
「じゃあ、またね」
「今日ありがと」
鈴香はきょとんとした。
「ご両親に会わせてくれて。これで堂々と付き合えるじゃん?」
「あぁ、そういうことか。ううん。こちらこそありがとう」
鈴香は目を細めた。
「チャラいの隠し通せたかな?」
「大丈夫だと思う。直紀くんがしっかりやってくれたから」
「良かった。ご両親の彼氏の条件マジで厳しそうだったな」
鈴香は苦笑いした。
「まぁ、娘を大事にしてる証なんだけどさ」
「そうだね」
「俺、絶対幸せにするから。これからもよろしく」
鈴香は笑顔でうなずいた。
(あぁ、かわいい。でも、我慢我慢)
「じゃ」
「うん」
直紀は軽く手を振り、帰っていく。
鈴香は笑みを浮かべると、嬉しそうに家に入った。
直紀は深く息を吐く。
(事情聴取されてる気分だった……)
直紀は苦笑いした。
口調は優しかったものの圧を感じた。
(そりゃあ突然彼氏いるって言われて、数日後に連れて来られてもなー)
しかし、一応合格をもらったようだ。
「うちの娘、料理できないけどいいの?」と言ってきたので「俺自炊できるので問題ないです」と言ってやった。
正直本当に鈴香に料理をさせようという気はない。
それは料理ができないからというわけではなく、包丁を使うという行為が危険で怪我の恐れがあるからだ。
(鈴香を守ると決めた。それは危険な行為も極力しないように促すことも含めて)
あの細く綺麗な指を怪我してしまったらと思うと、包丁を握らせたくない。
だが、もし本人が料理してみたいと言ったら?
冷凍のカット野菜を使えば包丁を使わずに済むだろうか。
「う〜ん……」
直紀は苦笑した。
「鈴香の彼氏、真面目そうな人で良かった」
「うん」
「変な人だったらどうしようって。ピアスしてるとか茶髪とか、そういうチャラい人」
鈴香は引きつった笑顔をした。
「まぁ警察官だし、真面目なのは当たり前よね」
「そうだねー」
(ごめん、お母さん。直紀くんはタバコ吸うらしいし、ピアスしてます)
「でも、イマドキのイケメンって感じよね」
「うん」
「将来結婚できたらいいね。かっこいいし、警察官だから収入あるだろうし、真面目だし」
結婚なんてはるか遠い未来だと思っていた。
だから想像がつかない。
結婚生活ってどんな感じなんだろう。
鈴香は首を傾げた。
数日後ーー
鈴香はショッピングモールで両親と別行動をしていた。
そのとき
「あっ、泥棒猫」
目の前からギャルが歩いてきた。
ビクッ
鈴香は固まった。
「直紀とまだ続いてるの?」
「あ……えっと……はい……」
「へー」
直紀の元カノはニヤリと笑った。
「イチャイチャしてる?」
「へ!?あっ、えっと、はい。たまに?」
「ふぅん。たまにはイチャイチャしてやんなよ?アイツそういうの好きだから」
直紀の元カノは鈴香の背中をたたいた。
「いや、わたし、経験値ないので、そういうの慣れてなくて」
元カノは瞬きした。
「全然?」
「はい。過去に付き合ったのは1人だけです」
「マジ?」
鈴香はうなずいた。
「その人とは?」
「高校のときなので、友達みたいな感じのお付き合いで……」
「マジか」
直紀の元カノは溜め息をついた。
「まぁ、じゃあ、上手いことやりなね」
「あ、ありがとうございます。あの、直紀くんのこと……」
「もういいのいいの。直紀の友達と付き合ってるからさ」
鈴香は驚いた顔をした。
「お互い捨てられないように頑張ろうね。じゃあバイバーイ」
直紀の元カノは去っていく。
鈴香は彼女の背中を見つめたーー
おわり




