対面
数日後ー
キュッ
直紀はネクタイを締めた。
「変じゃないよな?俺」
「大丈夫だよ」
直紀は洗面台の鏡を見つめる。
「ピアスはしてないし、俺今は黒髪だし」
鈴香はうなずいた。
「匂いも大丈夫だよな?」
「大丈夫。タバコの匂いも香水の匂いもしないし」
「今日は吸ってない。あと、汗のケアもちゃんとしといた」
直紀は「よし」とつぶやいた。
「っていうかスーツじゃなくても……」
「いや、スーツじゃないとダメだろ。ちゃんとした身なりで行かないと。だからピアス外したの」
鈴香は深く息を吐いた。
「直紀くんのこと、受け入れてくれたらいいんだけど……」
「うまいことやってみせるよ」
直紀はジャケットのポケットに触れた。
警察手帳が入っている。
「警察手帳、スマホ、カギ、財布……よし」
直紀はこちらを見る鈴香を見た。
「行くか」
「うん」
ふたりはうなずいた。
鈴香は深呼吸しながら、家の鍵を開けた。
「ただいま」
「お邪魔します」
鈴香の母が玄関に来た。
「初めまして。鈴香さんとお付き合いさせていただいてる黒田直紀と申します。これつまらないものですが」
直紀はお菓子を母に渡す。
「ありがとうございます。どうぞ」
鈴香と直紀は目を合わせた。
ふたりはうなずいて、リビングに行く。
「お父さん、直紀くん」
「どうぞ、座ってください」
鈴香と直紀はふたりの向かいに座った。
直紀は目の前に座る父を見て深呼吸した。
「鈴香さんとお付き合いさせていただいてる黒田直紀と申します」
「うん」
「仕事は何をなさってるの?」
母の質問に鈴香と直紀は顔を見合わせた。
いきなり来た!
「一応、警察官を……」
「えっ」
「警察官!?」
鈴香の両親は驚いた顔で顔を見合わせた。
直紀は手のひらを膝に擦る。
(直紀くん手汗大丈夫かな。わたしもだけど)
鈴香は右手の汗を膝で拭くと、直紀の左手を握った。
直紀は声に出さず「ありがとう」と口を動かす。
「本物の警察官……?」
「はい」
「職場で出会ったって聞いたけど」
「はい。俺の方から声をかけました」
直紀は左手を鈴香の右手に重ねた。
「あの……結婚前提にお付き合いさせてください。絶対幸せにします」
鈴香は目を潤ませた。
「まぁ……鈴香が選んだ人だから」
「チャラい人じゃなければ」
ドキッ
直紀は苦笑いした。
「そうだ。おやつと言っても出せるものが今なくて……」
「じゃあ直紀くんのお菓子食べようよ」
「うん」
直紀は鈴香を見た。
鈴香は笑みを浮かべる。
「直紀くんって言ったっけ。飲み物は何がいい?」
「何でも大丈夫です。お茶でもコーヒーでも」
「鈴香はカフェオレ?」
「うん」
鈴香はキッチンへ向かった。
直紀はリビングを見渡す。
白い壁にローズピンクの色のカーペットが敷かれている。
テーブルは正方形でナチュラルウッド。
チェストは白やナチュラルウッドで揃えられている。
「はい、直紀くん」
鈴香はコルクのコースターの上にカップを置いた。
カフェオレが入ったカップは珪藻土のコースターに置く。
「お菓子開けていい?」
「うん」
鈴香は包み紙を丁寧に開けた。
「わぁ……!クッキーだ!」
鈴香の目が輝く。
「鈴香とご両親がクッキー好きって言ってたからさ」
「そんな話してたっけ」
「うん」
鈴香の両親はカップを持って座った。
「ありがとう。もらうね」
「どうぞ」
「良い人そうで良かった。変なの連れてきたらどうしようかとドキドキしてたのよ」
ドキッ
直紀は苦笑いした。
「直紀くんも食べなよ」
「じゃあいただきます」
鈴香はカフェオレを口に含む。
飲み込むと、ほっと息を吐いた。




