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「猫島に行かないか」
同僚の久保田に唐突に言われた。
少し考え答えた。
「行くか」
猫島は隣の県にある。
小さな有人島で、人より猫の数が多くて、猫好きには有名なところだ。
そして俺も久保田も猫好きだ。
週末、猫島に向かった。
家からフェリー乗り場、待ち時間、そしてフェリーに乗り島に着いた。
四時間近くかかったが、ようやく着いた。
「おい、見てみろ」
猫島の名は伊達ではない。
海と小高い山の間の狭い平地には、あちこちに猫がいた。
「わーっ、すごーい」
「きゃっ、こっちにもいるわ」
同じフェリーに乗っていたいかにも軽そうな女二人組が騒がしいのが気になったが、無視して猫と戯れる。
とは言っても相手は猫で、しかも野良猫だ。
人なれはしているようだが、甘えてくるわけではない。
「おい、こっちこい。逃げるな」
その辺の野良猫ほど全力で逃げないものの、ある程度の距離は保とうとする。
「おい、逃げるな。逃げるなってば」
久保田は猫を追いかけるのに懸命なようだ。
俺はそんな久保田を無視して、ただ猫を眺めていた。