EP2-2:終わった……
その日の放課後、ボクは波留に”オタ活”の部室に呼び出されていた。
オタ活の稼働日は週2回で、今日はお休みの日らしい。
「ここ……だよね?」
そこは教室のある校舎とは別棟の、2階の隅の空き教室だった。
「誰もいないなぁ……」
教室の引き戸を少し開けて中の様子を伺ってみたけれど、人の気配は無かった。
スマホに送られていた波留からのメッセージによると、先輩には話を通してあるから部室に入っていていいとの事だったけれど、部外者が勝手に部室に入っているのはマズイのではなかろうか。
『部室についたけど誰もいないみたい』
『波留はまだ来ないの?』
ボクは波留のスマホにメッセージを送る。返事はスタンプで『まだ』と言っていた。
部活棟の隅っこで人の気配がしていないとはいえ、廊下でじっとしていいるのも手待ち無沙汰で困る。そう思っていると追加のメッセージが届いた。
『悪ぃ』
『担任につまらん用事押し付けられた』
『先に部室に入ってて』
部員の許可が出た。ボクは『ありがとう』を意味のスタンプで返事をすると、引き戸を開いて”オタ活”の部室の中に入った。
部室の造り自体は一般的な教室と同じだった。だけど、その中には教卓も机のなく折りたたみ型の長テーブルが数台とパイプ椅子があった。文化部系の部室として使われているためだろう。
「あの中は何だろう?」
長テーブルの上に一つの段ボール箱が置かれていた。中に何かが入っているのだろうか。ボクはそ中身が気になった。
「あ……、これは……」
段ボール箱の中にあったのは、乱雑に放り込まれた中綴じのマンガ雑誌だった。だけど、その表紙のイラストの特異性で中身は何となく想像ができてしまう。
「多分えっちなやつだ」
表紙のイラストの女の子はとてもかわいいけれど、その服装の露出は広く、なにより”そういう気分”になっている時の艶めかしい表情をしている。ボクにはそういう経験はないけれど、それは何となくわかった。
「もう、学校にこんなもの持ってきてるのってどういう事?」
”オタ活”には女子部員もいるって聞いたけどなぁ。それとも、オタク女子というのはこういうのに寛容なのかなぁ。
そう思ったものの、ボクは引き寄せられるようにその雑誌を手に取っていた。
「これ……、思ったより……激し……」
パラパラとページをめくった先には、行為そのものがリアルに描写されていた。本当に際どい所には”消し”が入っているけれど、その形や肉感は容易に想像できる。とても……卑猥だ。
「こんな風にされたら、どんな感じなんだろう……」
ボクは、そのマンガの中の女性の立場に入って見入ってしまった。
失敗だった。ボクの身体はその行為に反応した。
「あ……」
反応したところが、長テーブルの角に触れていた。エッジの効いた角がそれを刺激する。
ボクは雑誌を開いたままにテーブルの上に置いて、刺激に身を任せてしまっていた。
それは体感的にはほんの数十秒の事だったのだけれど……。
気が付くと、しっかりと閉めたはずの部室の扉が少しだけ開いていた。
横髪に赤いメッシュが入った丸眼鏡の女の子がしゃがんだ姿勢でこちらを見ていた。
いや、それより重要なことは、彼女がスマホのカメラをこちらに向けていたことだ。
終わった───。
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