EP1:プロローグ
「は? 真樹、今なんつった? もう一度言ってみろ」
「だから、今日朝起きたら男になってたんだって」
「いや、お前元々男だったんじゃ……」
「非道いな!!」
ボクは憤った。冗談にも程がある。
ボクの名は真樹。
目の前にいる波留はいわゆる幼なじみだ。ある休みの日の朝、身体の異変に気が付いたボクは激しく動揺したまま家を飛び出し、気が付いたら彼の部屋にいた。呆然とした顔でふらふら歩いているボクを見つけて声をかけたらしい。
「まあ落ち着けって」
波留とは幼稚園の年長からの仲だ。特別べったりするようなことはなかったけれど、顔を合わせれば話し込むこともあるし、それなりに仲のいい幼なじみだ。高校生になった今でも、部屋で二人きりになる事は抵抗はない。もっとも、今は男同士なので変な警戒をすることもないのだけれど。
「そうか……。どこか中性的な感じはしてたんだ。今まではそれを隠してたってことか……」
波留は、ボクを見つめながら腕を組んで何やらボソボソと言っていた。
「いつ気が付いた?」
「……起きた時」
「うん」
「……これが」
ボクは人差し指を下に向ける。
「それが?」
「大きく……なってて……」
「なるほど。まあ、そういうこともあるよな」
「どうしたらいいか分かんなくて……」
「ちょっと確かめさせてもらうぞ」
そう言うと、波留はおもむろにボクの方に手を伸ばし、下半身の”それ”を握った。
「な、なにするんだよう……」
ボクは、恥ずかしくなって座ったまま前にへたり込んだ。
「分かった。信じる」
へたり込んだまま波留の顔を見上げると、何やらすっきりした顔をしていた。
「どうして?」
「中身が男ならこんな反応はしないだろ」
そういうものだろうか。中学の頃は、男子がふざけてそんな事をしていたような気がする。
「悪かったな。まあ起きろ」
波留は、ボクの手を取ってへたり込んだままのボクの身体を起こすように促す。
「まあ、どうしてそうなったのかは分かんないけどさ」
「波留ぅ……」
ボクはまだ正気を取り戻せていない。とりあえず波留がボクの話を信じてくれたのは救いだった。
「困ったことがあったら何でも言ってくれ。力になるよ」
「……ありがとう」
ボクはうつむいてお礼を言った。照れくさくなって、波留の顔が見られなかった。
「……真樹。あのさ」
「なに?」
「俺、お前が好きだ」
「はあ?」
待って。信じられない。なんでそれを今言うの?
「俺、自分が変なんだと思って抑えてた。真樹は男として過ごしてきたし、それは不自然じゃなかった。でも、真樹は本当は女だったんだ」
「ねえ。ちょっと、話がかみ合ってない気がするんだけど……」
「真樹!」
波留は突然ボクに抱き付いてきた。ちょっと待って。何が何だか分からない。もうホント無理。
「バカぁ!!」
ボクは波留の頭を両手でつかみ、床に叩きつけて体を引きはがした。そして、ぐちゃぐちゃに気持ちが動転したまま部屋を飛び出した。
後から聞いた話では、波留はしばらく気を失っていたらしい。やりすぎだ。少し悪い事をした。
突然思いついた設定を思いつくままに書いてみました。続きを書くかは反応次第ですが、先々の展開までは考えてないのでちょっと後回しになるかもです。
連載作品がエタりかけてるので、そっちもなんとかしないと。